僕の大事なコレクション
Everything is Illuminated
2006年5月12日 新宿 シネマスクエアとうきゅうにて
(2005年:アメリカ:105分:監督 リーブ・シュライバー)
たまたま偶然ですが、直前に観たドイツのファティ・アキン監督ものに通じるものがありました。
ファティ・アキン監督はトルコ系ドイツ人。
この映画の主人公、ジョナサン(イライジャ・ウッド)は、ユダヤ系アメリカ人。祖父の国、ウクライナへの旅が始まります。
家族にまつわるものをなんでもファスナーつきのビニール袋、ジップロックに入れてコレクションしているという変りもの。
部屋の壁いっぱいに、家族にまつわるもの、パンツやお小遣いのドル札、おばあさんの入れ歯・・・ピンで止めている。
何故、ジョナサンはそんなことをするのか、また、いつも黒のスーツに度のきついメガネ、表情のない顔をして、一生懸命コレクションをしている、どんな仕事をしているのか、生活感のない人です。
そんな中で、祖父、サフランの残したものは、バッタが入ったペンダントヘッド。祖母が死ぬ間際に渡した一枚の写真には若き祖父と女性が立っていて、女性の首にそのペンダントが見える。それだけを頼りにウクライナへ行くジョナサン。
大体、コレクターというのは、興味のない人から見たら、なんの価値も意味もない「物」というのが多いですね。
私の場合、何か集めてますか?と言われたら、映画のチラシやパンフレットは集まってしまうけれど、集めてはいない、と答えるだろうし、特に熱心に集めている「もの」はないのです。
だから、ジョナサンのコレクションに何故?がまず、出てきます。
家族との思い出を大切にしたいから・・・と言っても肝心の家族で出てくるのはすぐ死んでしまう祖母だけ。
家族の映画ではないのです。
あくまでもジョナサンは、自分の体の中のどこかにある祖国、ウクライナを探す。
ウクライナで怪しげな英語をしゃべる若者、アレックスがお出迎え。アレックスはアメリカかぶれですが、相当勘違いをしています。
「ニグロは格好いいよな」などとニグロを連発して、さすがにジョナサンにアフリカ系と言うんだよ・・・なんて注意されています。
尊敬する人はマイケル・ジャクソンだ、というのもなんとなく可笑しい。東欧の欧米文化への、かなり勘違いした憧れともコンプレックスとも言えるものを持っているのですね。こういう日本人、いますねぇ~アメリカかぶれで、勘違いしている人。アレックスは憎めないキャラクターなのでいいのですが。
また、運転手はアレックスの祖父ですが、ひねくれもので、目が見えるのに見えないと言って、盲導犬、サミー・デイビス・Jr.Jrというメス犬をいつもつれている。アレックスと祖父は、表向きは観光ガイドなのですが、実はジョナサンのようにユダヤ人の祖国探しというのが本業です。
なかなか写真に書いてある村が見つからないけれど、突然、一面のひまわり畑の中の一軒家がある。
もう急にファンタジック。それまでも、菜食主義者のジョナサンと、アレックス達のすれ違いの面白さ、犬恐怖症なのに隣に犬乗せて・・・とか。
ただ、会話の中にちょっとした毒があります。祖父は「ユダヤ人は後に乗れ」と差別的な事を平気でいう。でもそれは何故か・・・という伏線になっているのですが。
ユダヤ人はヨーロッパで迫害されてアメリカに渡った人が多い・・・・だから、祖国に戻ってきても、見つけるのは「ユダヤ人の悲劇」でしかないのです。軽い明るいファンタジックな映画であってもそういう背景の重さがあります。その辺の見せ方がとてもいいですね。
さらりとしているけれど、綺麗事にもしていないし、かといって、残酷窮まる描写もない。
ジョナサンの見つけたものは、何だったのか、そして他人から見たら、無意味な物でも、その人にとってはとても大切な物だ、という説得力になるのです。原題が「全ての物は光り輝いている」というのが納得のいく映画です。
この映画で、イライジャ・ウッドはちょっとつかめない不思議な頑なさを通しています。度の強いメガネの奥に大きな大きな青い目。
これは目の映画、と監督が話してますが、本当に分厚いレンズ越しで大きな青い目でじ~~~と見つめる絵というのはかなり迫力。
そういうキャラクターの作り込みの上手さも好きです。
自分が興味ないから、無駄なものだ・・・・確かに興味がなければ意味はないのかもしれない。
私は映画を観てこうやって、あれこれ書いていますが、興味ない人には全く読まれないだろう、ここまで読んでもらえるのは稀だろうと思っています。
ですから、この感想のコレクション?が「私の大事なコレクション」なのです。
*********追記*********
この映画は、新宿のコマ劇場前のシネマスクエアとうきゅうで観ました。
この映画館も私は大好きでした。縦長の映画館で、椅子が妙にしっとりしていて坐り心地がとてもいい。上映する映画も独特なセレクションで好きな映画館でしたよね。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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