太陽に恋して

太陽に恋して

Im Juli(In July)

2006年5月10日 シアターN渋谷にて

(2000年:ドイツ:100分:監督 ファティ・アキン)

ファティ・アキン監督の『愛より強く』の日本公開記念とでもいいましょうか・・・2000年のアキン監督の第2作目も公開になりました。

この映画も、トルコ系ドイツ人である監督の2つの母国、ドイツとイスタンブールが出てきますが、あくまでも主人公の青年はドイツ人で、たまたまトルコ人の女の子が好きになってしまった為にイスタンブールへと向かうロード・ムービーです。

物理の教育実習生、ダニエルは、真面目なんだけれど、真面目なだけ・・・という青年。生徒には馬鹿にされるし、これから始まるバカンスのシーズンを一緒に過ごす恋人もいない。

でも、そんなダニエルを遠くから見つめている女の子がいる。路上でアクセサリーを売っているユーリ(ドイツ語で7月)

ユーリは、ダニエルの気をひきたくて、太陽の柄の指輪を売りつける。そして「太陽を持った女の子と恋に落ちるのよ」などと言う。

半信半疑なダニエルだけれども、太陽の柄のTシャツを着た、可愛いトルコ人の女の子、メリクと知合い、好きになってしまう。

メリクとダニエルを見かけて・・・・あ~~~あ~~~~あ~~~~って顔をするユーリ。

メリクがイスタンブールへ帰るというので、そうだ、何も予定のない夏、僕はイスタンブールに行こう!と思い立つダニエル。

そんな時、ユーリは夏恒例の行き先は、ヒッチハイカーまかせの当てのない夏の旅行に・・・で、車を止めたら中にいるのはダニエル。

にま。と笑うユーリ。????なダニエル。それから、陸路でのドイツからイスタンブールへの旅が始まります。

暖かい笑い、微笑ましいエピソード、ちょっと変わった人たちが次々と現れる。冒頭、ボロボロになったダニエルが止めた車のトランクには何故か死体がある。そしてパスポートも盗まれてしまったダニエルのあの手、この手がとても微笑ましい。

ルーマニアの国境で、パスポートがないから通さない・・・と言う国境の警備の人がファティ・アキン監督自身で、困ったダニエルが、ユーリと夫婦だ、という事にしてくれ・・・というと、ちゃっかり2人の結婚の証人になったり・・・ちゃっかりトラックいただいちゃったり・・・俳優としてもファティ・アキン監督は活躍しているのですね。

ダニエルは太陽を探しているけれど、途中でルナ(月)という女性トラック運転手に出会い、騙されてしまいますが・・・・他にも色々な国で色々な事が起きる・・・真面目一本だったダニエルもどんどん積極的になっていく。そしてユーリという女の子の良さもしみじみとわかってくるのです。

とてもロマンティックな、のどかな、微笑ましいロード・ムービーで、大笑いというより、くすり・・・と胸が温かくなるような、そんなしあわせ感に満ちています。夏、7月の日射しの美しさ、訪れる街のめずらしさ・・・そんな中でのダニエル成長物語。

ダニエルを演じたモーリッツ・プライプトロイは、とても誠実な感じがよく出ていましたし、ユーリ役のクリスティアーネ・パウルは青い目に黒い髪、その青い目がいたずらっぽく笑うのがとても可愛らしい。

写真を使って旅を飛ばしてみせたり、船、フェリーでハプニングあり・・・ヨーロッパって(当たり前だけど)地続きで国がつながっていて、ドイツとイスタンブール、遠いようでも、車で行けるのだなぁ、というのは島国の民である私はめずらしく見ました。でも地続きだからこそ、ドイツへの移民という問題も生じてくる訳です。そういう地理的なつながりを描いた映画ってとても興味あるのです。

イスタンブールへ向かう旅、本当に自分の好きな人に気づく成長する旅、偽装結婚など、『愛より強い旅』の原点のようなものも見られますが、なんと言っても夏のヨーロッパの開放的な空気がとても気持よい、そしてとてもロマンチックな映画です。

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