緑茶

緑茶

Green Tea/緑茶

2006年5月3日 東京都写真美術館ホールにて

(2002年:中国:89分:監督 チァン・ユアン)

この映画は、話は聞いていたのですが、もう公開されるのはあきらめていたので、こうして単館とはいえ劇場公開されるのは嬉しいです。

監督のチァン・ユアンという人は『クレイジー・イングリッシュ』『ウォーアイニー』の監督さんですが、プロフィールを見ると、作る映画は海外の映画祭では認められているのに、内容が同性愛だとか、障害者だとか・・・ということでことごとく上映禁止になっています。

『青い凧』の田壮壮監督も、中国の許可を得ず、『青い凧』を東京国際映画祭に出品してグランプリをとったものの、無許可だということで10年間の監督禁止を言い渡された・・・という。私は中国映画は好きですが、こういう国が良い映画に対して口をはさんで権力を行使するのは、好きではありません。

別に中国だからではなく、映画ではどこの国でも、「上映できない」映画がたくさんあるのです。そう思うと劇場公開されるというだけで、有難いことだと、改めて思います。

この映画では、緑茶の飲み方が、急須ではなく、ガラスのコップにお湯をいれ、そこに茶葉をそのまま入れて飲みます。

グラスの中で、乾いた茶葉が、ゆっくりと開いていき・・・まるで若葉のような青々とした葉になるのが冒頭、描かれます。

撮影はクリストファー・ドイル。まさにゆらめくようなカメラワークです。綺麗なものを、綺麗に映すというより、なにかフィルターをかけたような不透明な綺麗さが時々出てきます。

また、顔のアップの連続であり、緑茶を飲む女性の口のクローズアップ、目のクローズアップ・・・など大変、顔に焦点をあてた映画です。

しかし、顔のアップが多いとはいえ、主人公のチン・ミンリャン(ジァン・ウェン)が、お見合いで出合う地味でメガネをかけた大学院生、ウー・ファンと夜のナイトクラブでピアノを弾く女性、ランラン(ヴィッキー・チャオ二役)は、どうみても同じ人物なのに、違う人です。

誰が誰なのか・・・頑なで、きつい性格なくせにお見合いを繰り返すウー・ファンと、声をかけられたら誰とでも寝る、恋人は300人くらいかしら・・・なんてにこやかに言う華やかなランラン・・・どちらが本当の姿なのか?それはわかりません。

ウー・ファンとミンリャン、ランランとミンリャンの会話が、えんえんと続きます。

そして、ミンリャンという男性は、金持ちらしいけれど、一体何をしているのか、ウー・ファンは大学院生だというけれど地味な服着て本を抱えているだけ、ランランは肌の露出の多い、男性を誘うような不思議な存在。そして彼らが出合うのはいつも外だっり、お洒落な店だったり・・・・一体この人達ってどういう人?という所がとても曖昧なのです。

この映画は最後の最後まで曖昧で耽美的。生活感よりも、人間が惑う姿をゆらめくように写し撮る、そんな映画です。

ウー・ファンは、ミンリャンに「友人の話」といいながら、実は自分の話だろうということを話ます。それは抑圧的な家族の話であり、また、緑茶の葉で、恋愛が上手くいくかどうかわかる、と言う。しかし、じゃ、やってみてよ・・・というとそこは曖昧なんですね。

ミンリャンは、頑ななウー・ファンが気になって、まといつくけれども、「次のお見合いがあるからつきまとわないで」とけんもほろろに言われてしまうけれどめげない。でも、ランランに会うとほっとする。誰が誰で、誰が誰を好きなのか・・・結局、好き、恋愛、結婚ってどういうこと?って思ってしまいますね。好きだから、恋愛関係になって、結婚する。それだけだろうか・・・人間関係は?

そこら辺の惑いのムードがとても綺麗で、ヴィッキー・チャオは、アップに耐えうるとても綺麗な肌、眉、目をしています。

どこで終わってもいいような、終りはないような・・・・緑茶の茶葉がゆらゆらグラスの中でゆれている・・・そんなイメージのだぶらせ方がとてもセンスいいです。

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