胡同(フートン)のひまわり

胡同(フートン)のひまわり

Sunflower/向日葵

2006年6月22日 九段会館にて(試写会)

(2005年:中国:132分:監督 チャン・ヤン)

2年くらい前に家族が中国へ旅行に行った時、もう、あちこちで古い家を壊している風景を目にしたそうです。

通りすがりの観光客にもわかってしまう、新しい中国への変貌。

この映画は、父と子の30年の葛藤を描いて、古い中国と新しい中国を描いています。

父は文化大革命で、画家としての夢をくじかれた。それを息子に託そうとするあまり厳しくなり、反抗する息子。

最初は家族は胡同の四合院という、石造りの長屋のような所で暮らしている。それは伝統的な美しい街並ではありますが、結局は長屋暮らし。近所との距離が近すぎて住みよい暮らしとは言えないのかもしれません。

しかし、どんどん四合院は、壊され、高層マンションやアパートが林立する現代。

父は古い四合院、母はアパート暮らし、息子は両親から逃れる事に固執する。

とにかくそれぞれの言い分を曲げない頑固者同士。

この映画が、興味深いのは、文化大革命のその後の中国の様子が、きちんとニュース映像などを出してスムーズに語られる所と、一人っ子政策という中国が打ち出した政策ゆえの悲劇です。

また、出産のシーンというのは、あまり映画でははっきりとは描かず、赤ちゃんが産まれるともうふわふわの赤ちゃんだったりしますが、この映画では、一人っ子政策で、また様々な理由で、「子供を産みたくない」という若者たちを描きながら、リアルな出産のシーンを出してきます。

本当に産道から出てきて、へその緒を切ったりする・・・どうして子供が産まれる瞬間ってあんなに感動的なのかなぁ、と思います。

男の人に観て欲しいですね。(かつてスティングのドキュメンタリー映画『ブルータートルの夢』で奥さんの出産にカメラが入って以来の事かと)

父の夢の抑圧があまりにも強すぎて、自分が父となる自信が全く持てない息子、というのも現代的。

息子はなんだかんだ言って絵の道へと進むけれど、お父さんとお母さんの生き方の違いと夫婦の深い絆のような何か、がとてもいいのです。

また、隣人の男は父を昔裏切った。その恨みを持ちながらも、住む人の少なくなった四合院では、将棋の良き相手・・・といっても、向かい合って将棋するのでなく、一手を打って、その場を去ると、それをまた見て、こうするっといったえらく距離のある将棋の差し合いっていうのが、微笑ましくも、父と隣人の距離を現わしています。この将棋のシーンとても好きですね。

この映画の監督は『こころの湯』の監督さんなのですが、撮影監修はクリストファー・ドイル。(撮影監督ではない)

宣伝で使っても良さそうなのに、一切使っていません。

四合院が、ブルトーザーで壊されて埃がもうもうと立つシーン、冬は寒くて池が凍って皆がスケートを楽しむ風景など、とても中国の移り変わりを切り取ってみせる映像なんですね。

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