玲玲(リンリン)の電影日記

玲玲(リンリン)の電影日記

Electric Shadows/夢影童年

2006年6月7日 シアターN渋谷にて

(2004年:中国:100分:監督 シャオ・チアン)

映画だけが、私の人生。

この映画は、ずばりそういう映画です。

現代中国で、水配達の仕事をしている青年ダービン(シア・ユイ)は、映画が大好き。稼ぎは少ないけれど、映画館に行くのが唯一の楽しみ。

特に、アクション映画が大好きだっ。アメリカ映画『K-19』なんかをわくわくしながら観ている。

さて、いつものように自転車で映画館に行こうとしたところ、レンガの山にぶつかって転倒。すると若い女性が飛び出してきて、いきなりレンガでダービンの頭をがつん。

当然、被害者のダービンですが加害者の女の子は口を聞かず、黙って自分の家の金魚の世話をしろ、と逆に命令されてしまう。

うーん、なんだかなぁーと思いつつも、女性の家に行くと、びっくり、家の中は、映画のポスターだらけの上に、ホームシアター設備があって家がそのまま映画館のようなのです。

映画好きのダービンはそんな家に魅了されてしまう。しかし、出てきた一冊のノート。そこには女性の日記が書かれていました。

文化大革命の時代に、美しくて女優になりたいと思う母。しかしシングル・マザーになって、周りからは批判の対象に。

そんな母に育てられ、野外映画上映が大好きな少女、玲玲(リンリン)・・・母と同じように女優になりたいという気持が強くなる。

しかし、映画の上映技師の男性と母が再婚して、弟が産まれてから、疎外感を持ち、家を飛び出してしまった玲玲。

こういう「とにかく映画が好き」という気持を全面に出している映画に私は弱いのですが、反面、ノスタルジーだけの甘い映画になってしまう可能性も高いのです。でも、好きなものに全身全霊をかける、というのはそうそう甘くない、というのがこの映画で強調されていて、そこがよかったです。

監督はまだ若い女性の監督だそうですが、その「甘くない」という部分の出し方など、達者です。

玲玲は、本当に映画が好きで、テレビが出始めて人々がテレビに夢中になるのを苦々しく思う。

また、女優になりたい、という夢も挫折せざるを得ない。家も飛び出し、家族とは別の道を1人で歩まなければならない。

寂しい女性にしかなれなかった玲玲は、幸せな人生を歩んでいるとは思えない。両親への罪の意識にも悩まされ続けている。

かたくなに家に映画館を作って、私の映画の世界を必死に守ろうとしているだけです。そこが哀しいのですね。

ダービンも玲玲も、玲玲の両親もそれぞれに映画への思い入れはあるけれども、一緒ではない。それぞれがそれぞれの違った思い入れを持っている。その違いがくっきりとしていましたね。

昔の中国で上映が許可された映画がたくさん出てきますが、どれも国威主張映画であり、国粋的な映画であったり、抗日映画であったり・・・そうそう選べる時代ではないのです。それでも、スクリーンに映る人々の姿に、皆、夢中になる。それは何故なのだろう。

スクリーン、銀幕に映る影がこんなに魅力的なのは何故なのだろう。

実は私は映画が好きですが、何故、映画が好きなのか、逆にはっきりしなくなってきたのです。

別世界への現実逃避・・・それだけではない、と思うのです。でも、玲玲の気持はよくわかる。哀しいくらいに映画が好きなのです。

テレビからインターネットの世界に時代は変わっていって、銀幕で観る映画は、衰えているのはよくわかるのですが、決してなくなってしまうことはないだろうと思います。

スクリーンに映る世界。それは自分を重ね合わせる世界でもあり、スクリーンに鏡には映らない自分の姿を観ているのかもしれない、とこの映画を観て思いました。

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