インサイドマン

インサイドマン

Insideman

2006年6月1日 神保町 一ツ橋ホールにて(試写会)

(2006年:アメリカ:128分:監督 スパイク・リー)

最近では『25時』など、社会派映画の監督、スパイク・リーが銀行強盗ものの映画を作る、というのは少々驚きました。

銀行強盗ものの映画というのは、過去たくさん作られていて、最近観たものでは『陽気なギャングが地球を回す』など・・・大体が「現金」目当てです。

しかし、この映画が、上手いなぁ、と思うのは、銀行が扱っているのは「現金」「小切手」だけではないのですね。

貸金庫。これあまり知られていないけれど、銀行の重要な仕事のひとつなんであります。

ニューヨークのマンハッタン信託銀行の支店に、突然、押し入った4人の銀行強盗。主謀犯がクライブ・オーウェンです。

映画は、クライブ・オーウェンの独白で始まります。いつ、だれが、どこで、なにを、どのように・・・4W1Hを意味深に観客に説明する。

犯人達は、人質をとった後、人質たちを自分たちと同じ格好に着替えさせる。これで、誰が犯人か、人質か・・・の錯乱作戦。

そして警察から、交渉人のデンゼル・ワシントンが、颯爽とというより、ミスして仕事ほされているんだけど、担当者が休暇中!ということで、やんなさーい、ってなことで、犯人との交渉人になります。

そんなとき、マンハッタン信託銀行の会長、クリストファー・プラマーは、銀行強盗の知らせを受けて、何故か、やり手で有名な女弁護士、ジョディ・フォスターを呼び、ある依頼をする。

警察のデンゼル・ワシントンとSWATの隊長、ウィレム・デフォーたちと犯人、クライブ・オーウェンとのやりとりは、どうみても、犯人達の方が上手で、振り回されてしまう警察。

そこへ、ジョディ・フォスターが権力をバックに、現場に乗り込んでくる。内心、おもしろくない、デンゼル・ワシントン。

さてさて、クライブ・オーウェンたちの本当の目的とは?ジョディ・フォスターは何を依頼されたのか?デンゼル・ワシントンたちは、どうしなければいけないのか?といったサスペンス展開がなかなかスピーディに先が見えない上手さでてきぱきと語られます。

しかし、これは、ただの爽快愉快な犯罪ものか、というと、出てくる人々は人種様々。会話の中には、たくさんの人種の違いによる誤解や偏見が混じっているところがまた興味深いですね。ただの娯楽ものなんかにしない、スパイク・リー監督らしい思惑が見えるのです。

クライブ・オーウェンは、冷静でふてぶてしい。デンゼル・ワシントンは、正義の人というより、欲もあれば、不満たらたらでもある人間くさいくずれた部分を出していました。ジョディ・フォスターは、本当に頭良くて世渡り上手い優秀な弁護士という雰囲気を持っています。

デンゼル・ワシントンの粋なパナマ帽に対して、ジョディ・フォスターの肩パットががっちり入ったビジネスウーマンスーツの対決っていうのもおもしろかったですね。

出てくるシーンは、ほとんどが銀行の支店の中、現場に到着した警察の車の中、と狭い空間を集中的に映しているのに、まったく飽きさせないのはやはり、会話やストーリーの組み立て、役者の演技、などが上手く合致しているからでしょう。エンターテイメントというと派手な爆発やカークラッシュや銃撃戦・・・といった安易な設定をあくまで慎重に避けています。

そして、人間の欲、金と権力の描き方、扱い方・・・成功者といわれる人々の裏にうずまく金と欲の世界、そんなものも垣間見せる。

また、色々な人種の人々が交錯する、というのはアメリカならではの設定であって、他の国の銀行強盗ものとは違う独特な雰囲気を出している所、大変気に入りました。

また、タイトルになった「インサイドマン」って何?というのも映画を観ていく内に納得します。

オープニングとエンディングは、インド・ミュージカル映画の妙に明るくてノリのいい音楽をメインにしているのも、普通のアメリカ・ハリウッド映画でなく、かといってインディペンデント映画ではないという娯楽性と社会性が上手く融合した映画になっています。

上手い映画だなぁ、本当に。

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