愛のめぐりあい

愛のめぐりあい

Al Di La Delle Nuvole/Beyond the Cloud

2006年7月28日 日比谷シャンテ・シネにて(BOW30映画祭)

(1995年:フランス=イタリア=ドイツ:110分:監督 ミケランジェロ・アントニオーニ、共同監督 ヴィム・ベンダース)

 脳梗塞で半身不随、言語能力を失ってしまったミケランジェロ・アントニオーニ監督をヴィム・ベンダース監督が手となり足となりサポートして作った愛の物語。

愛の物語といっても、描かれるのは「愛の不毛」です。

 狂言回しとなるのは、おそらくアメリカ人の映画監督、ジョン・マルコヴィッチです。

ジョン・マルコヴィッチが飛行機に乗ってイタリアに旅する所から映画は始まります。映画監督の孤独なモノローグなんてヴィム・ベンダースらしい所です。

しかし、イタリアの村や街を訪れたある映画監督には、愛の物語が見える。それは、「出合った瞬間に恋に落ちる男女」の物語。

すべてが、監督の空想の世界か、というと、途中でその男女の男が、ジョン・マルコヴィッチになったり、恋の物語はとても幻想的につながっていて、どこからが、物語でどこからが、監督自身の物語なのかは、はっきりとはわかりません。

 この映画は、とにかく奥行きのある映像が迫力。石柱が並ぶ回廊、杭が立つ波止場・・・・遠近法というのはこうやって描くのですよ、というお手本のような美しい映像の数々。それが素晴らしい。

大変、官能的なシーンの方が有名のようですが、私は風景の中に立ちつくす人の映像が好きです。

特に、海辺の砂浜にあるさびれたブランコにジョン・マルコヴィッチが乗るあたりの、風が吹いて、浜辺は遠くまで広がり、誰もいない灰色の海は、どこまでも果てしないような風景が印象深いです。

 男女の出会いの物語はいつも唐突に始まり、唐突に終わる。

永遠の愛などない、という刹那的なムード。出合って惹かれあってもすぐに消えてしまう女、再開しても今度は男がすぐに消えてしまう。

波止場で出合ってすぐに愛をかわすもののすぐに別れる2人。

夫の浮気に苦しみ、女2人の間に立っても、どうしようもない男。

妻に逃げられた男と浮気に耐えかねた女の出会い。

どうにも暖かな、ほのぼのした恋愛とはほど遠い、ぴりりと辛い苦い恋愛の物語。

 出てくる人が、ファニー・アルダン、ソフィー・マルソー、ジャン・レノ・・・などですが、私は一番最初の話の若い男、キム=ロッシ・スチューワートのギリシャ彫刻のような美しさに驚きます。最近観た『家の鍵』では、若い苦渋の父親でしたが、この映画の頃はまだ、青年。

それはそれは美しいけれど儚げで、すれ違っていく恋愛の妄想の登場人物としてとてもインパクトがありました。

 エンディングの曲がU2とブライアン・イーノです。クラッシックが似合うような映画にこの曲もまたインパクトあり。

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