ハチミツとクローバー

ハチミツとクローバー

2006年7月26日 ヴァージンTOHOシネマズ市川コルトンプラザにて

(2006年:日本:116分:監督 高田雅博)

 私は美術大学に行きたいと思っていました。その為にデッサンの特別授業を受けたりしたのです。

しかし、やはり、私には大学で美術の勉強をするほど、絵は上手くありませんでした。

結局、全く違う専攻になってしまったのですが、いまでも、ぼぉ~っと美大に行けてたらなぁ・・・なんて、IFを夢想してしまうのです。

某美術大学出身の人が、授業でセルゲイ・パラジャーノフの映画を観た、なんて聞くと、ああ、ああ~~~なんて思ってしまったり。

映画の監督や映画関係者が、美大出身であるのを羨望の思いで見ている自分がいまだにいます。

 この映画の舞台となるのは浜美という美術大学です。

出てくる登場人物達は皆、美大の生徒だったり、先生だったり・・・・美大といっても、絵だけでなく建築科、陶芸科、など色々です。

映画全編に出てくる、美術大学の雰囲気。学生が講義を受けるというより、キャンバスや画材や木材がごろごろしていて、まるで文化祭のよう。毎日が文化祭の雰囲気。個性ある学生たちのぶつかりあいや、あまり縛られることのない自由な雰囲気。若さが全編を貫いています。

話も上手く出来ていると思うけれど、スクリーンから感じられる美大生の若い空気がいいです。

 そしてこの映画は、片想いの映画です。

原作が少女漫画だというのもうなずける、愛というより好きの世界。

竹本(櫻井翔)は、美大講師(堺雅人)の親戚の新入生、はぐみ(蒼井優)に一目惚れ。

真山(加瀬亮)は、アルバイト先の大学のOB(西田尚美)に片想いし、ストーカー的な行動がやめられない。

そんな真山の事が好きで仕方ない、陶芸科の山田(関めぐみ)

そして、万年浪人生で、世界放浪の旅から帰ってきた破天荒な天才肌の彫刻科の森田(伊勢谷友介)に惹かれてしまう、はぐみ。

 竹本、はぐみ、真山、森田、山田・・・この5人の美大生活の中での片想いの堂々めぐりをとてもテンポよくさばいています。

5人それぞれが、個性あって、いいもの、悪いものを持っているという描き分けもいいです。

わかりやすいのは竹本、森田、山田ですが、ちょっと何考えているのかわからない、少女漫画チックなはぐみの蒼井優とリアリティのある真山の加瀬亮が、似ているようで違うところです。

森田役の伊勢谷友介の天才ならではの、破天荒さというのが実にしっくりしています。万年留学していても、もう、画廊がついて個展が開ける程の才能を認められている。米米クラブのカールスモーキー石井も、文化学院の学生時代にもう画廊がついていたという話みたいです。

 これ、といって目立つものがないけれど、真面目で、誠実な竹本(趣味は城の模型造り)、素直な山田の想いを知っていても、やはり受け入れられない真山。

無口だけれども細い体で大きな抽象画を大胆に描く、はぐみ。

そんな5つの歯車が、かしいだり、上手く回ったり、はずれそうになっても、なんとか動いている・・・その潤滑油を果たしているのが、穏やかな講師の花本です。一見、花本は放任主義に見えてしまうのですが、後半、はぐみの保護者としての大人の目を出してくる。堺雅人の出しゃばらない演技が、派手なお騒がせ天才演技の伊勢谷友介と正反対で、面白い。

 原作が人気漫画というのは、最近多いのですが、ほとんどの場合、私は原作漫画を知りません。

知っていたら、イメージが出来てしまうのでしょうが、映画だけに限って言うとこの美大という個性的な空間での、健全な空気というのがとても気持よく思えます。

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