ジャンプ!ボーイズ
Jump! Boys
2006年7月21日 銀座シネスイッチにて
(2004年:台湾:84分:監督 リン・シュウシン 林育賢)
習い事、趣味が継続するために、必要なのは、「好き」であることだと思っています。
好きでもないことを無理矢理やらせても、続きはしない。勉強でも仕事でも、それが重要な事かもしれません。
このドキュメンタリー映画は、台湾の地方都市にある公正小学校の機械体操クラブの様子。
7人の子供たちは、小学2年生が5人、1年生が1人、幼稚園生が1人という構成で、コーチはもとアジア大会金メダリストの林コーチ。
この映画を撮った林監督は、林コーチの弟です。
最初に、お兄さんっ子だった自分の様子が、切り絵のアニメで紹介されます。
子供の頃は、いつもお兄さんのあとをついて回っていた弟ですが、兄は体操の選手になり、弟は映画の監督になった。
林コーチは、厳しい先生。小さい子供であろうが、叱る時は大声で頭ごなしに叱る。そして壁に立たせて恐怖の一対一のストレッチ。泣いてしまう子もいます。
上手くいかなければ、逆立ちの罰が・・・でも、子供達はなんだかんだ言って、林コーチについていく。
この林コーチが子供に接する時の距離の取り方がとても上手いのです。模擬試合をするときに、一等から七等まで、景品(お菓子)を必ず用意する。景品のお菓子を選ぶ、買う風景なども丁寧に追います。ビリは決まってキャラメル一箱。
もちろん、ビリは一番小さい幼稚園の子。故にあだ名はキャラメル君。
子供をおだてるだけではなく、叱るだけでもなく、褒めたり叱ったりの強弱のつけ方がとても上手いコーチなのです。
子供ですから、機械体操といっても、オリンピックのような凄い事はしませんが、それでもかなり厳しい、難しい事です。
キャラメル君は、鞍馬の上で、一回転も出来ない。子供だから身は軽いけれど、まだ、腕力がない。尻餅をついて、鞍馬から転がり落ちてしまう。また、ビリで、泣いてしまう・・・でも、しっかりキャラメルの箱は離さない。
林コーチ(兄)への監督(弟)のインタビューというのが結構長くあります。
このドキュメンタリーの特徴のひとつは、身内が撮っているということで、撮られる方も他人への警戒心がないということです。
この監督は子供が好きなのでしょう、子供たちが「監督になついている様子」がよく出ています。「今の撮った?撮った?」カメラに迫ってくる子もいれば、ピースサインを出して、画面をカニ歩きで横切る子もいて、そういう所をカットしていません。
機械体操は、戦う相手がいない個人競技なので、感情移入がしにくい、だからイメージトレーニングしかないのだけれども、子供たちにイメージトレーニングをさせるのが難しいといいます。
確かに、自分の動きを想像してその通りに体を動かす・・・というには小さすぎる子供たちです。しかし、子供たちは、先生の真似をして、手で自分の動きをイメージしているところなど、いじらしい。
また、機械体操は転落など、大怪我につながる事も多く、親たちの心配も映し出されます。親の言葉は大体、やはり怪我があるから、心配だけれども、子供がやりたい、というからやらせているというもので、やはり、やる気がないと駄目なのだろうと思います。
そして、全国ジュニア大会・・・・本番前の練習は、緊張でなかなか上手くいかない子供たち。コーチは、本番にむけて「怪我をしないように今晩は遊ばないこと」・・・・しかし、夜の布団の上では7人が団子状態になって遊んでいる。字幕で「コーチの言葉は頭に入らない。遊ばずにいられるか」
出てくる子供たちが、お金をかけた英才教育を受けている特別な子供ではない、普通の家庭の子供たちであるというのがいいですし、全国大会での、成果はどうなる・・・といった見せ方も上手いです。
しかし、一番良かったのは、撮影から一年後、再び監督が訪れたクラブで、鞍馬の上をくるくる回っていたキャラメル君。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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