ジャスミンの花開く

ジャスミンの花開く

Jasmine Women/茉莉花開

2006年7月10日 シネスイッチ銀座にて

(2004年:中国:129分:監督 ホウ・ヨン)

 この映画は、2004年の東京国際映画祭で上映されましたが、チケットは即日完売で観られませんでした。

チャン・ツィイー主演だし、すぐに公開になるだろうと思ったのですが、意外と時間がかかってしまったのですが今回やっと観る事が出来ました。

 ジャスミンの花の事を漢字で、茉莉花と書きます。ジャスミンティーは茉莉花茶です。

そして、花の名前の一字ずつとった、祖母・茉(マー)、母・莉(リー)、娘・花(ホア)という名前を持つ3世代の女性の若い頃をチャン・ツィイーが演じ分け、年をとるとジョアン・チェンがスイッチしてその母や祖母として演じ分ける。また、それぞれの時代のカラー、着る服、映像の色合いを、緑→赤→青と色分けしています。映画の構成がきっちりかっちりしている映画であり、また女性の立場の変貌と逆に変わらない部分、それを綺麗に描き分けています。描き分けの映画とも言えます。

 上海。1930年代。厳しい母のもとで家の写真館の手伝いをしている茉(マー)は映画が大好き。

映画のスターにあこがれ、母に叱られながらも映画館にかよっています。

前髪をおろし、髪を縦ロールにして、リボンをつけ・・・緑のスカートに白いブラウスといった清潔感あふれる少女。

そして茉は、写真館の写真を見た映画プロデューサー(チアン・ユエン)にスカウトされ、銀幕スターとなる。

同時にプロデューサーの愛人にもなり、公私共々絶頂を極める茉。美しい緑のチャイナドレスを身にまとい、『ジャスミンの花ひらく』という歌を歌い、映画雑誌の表紙を飾る。しかし、妊娠の発覚と共に、日中戦争の勃発。

プロデューサーは雲隠れしてしまった中、1人、娘を出産する茉。どうしても産まれた娘に愛情が持てない茉。

 そして文化大革命の時代の1950年代。美しい娘に成長した莉(リー)は、労働者階級のリーダーである青年に恋をする。

文化大革命の時代のカラーといえば赤。赤いスカーフを身につけ、文革を信じて疑わない、そんな少女。

映画のスターの夢が、出産でくじかれた事に対してまだ未練を持っている母、茉は、そんな恋には否定的。

反感でもって結婚する2人ですが、結婚式で莉は『ジャスミンの花ひらく』を歌う。

しかし、この夫婦生活は、文革というものにはばまれ、上手く行かない。

 1980年代。現代っ子の莉の娘、花(ホア)は、めがねをかけた真面目な少女。

地味な青の服を着て、手先が器用で編み物を熱心にする祖母思いの少女。

おとなしいけれど、反面、気性の強さも持ち合わせている。

遠くの大学へ行くという青年(リウ・イエ)と恋をして、祖母・茉にかくれてこっそりと結婚してしまう。しかし、遠くへ行ってしまったは心変わりが・・・そんな時、花は妊娠に気づく。

 茉・莉・花・・・それぞれの女たちは共通して男運が悪く、妊娠、子供というものに悩み、苦しみ、そして生き延びていく。

この映画では男という存在は、女にとってはひたすらマイナスの存在です。そしてその事を、大人はわかっていさめても、やはり若い者の恋する気持の方が先走ってしまう、という同じ事の繰り返し・・・ではあるのですが、ではそんな女が起こした行動というのは3通り。

 このそれぞれの女の生き延び方三種類というのが大変興味深いですね。特に、現代の花は、妊娠に気づくとそれを逆手にとって、相手の青年を苦しめる。そんな苦しむ表情を、ひそかに冷たく見つめる女の怖さ。チャン・ツィイーはただかわいい、美しいだけでなく、そんな時の残酷な表情を一瞬ではありますが、堂々と見せてくれる。男の人はよく見ておいた方がいいですよ。美しい花にひそむ棘に。

 そして、昔は耐えるだけだった女の立場が、主張していく立場に変わっていく様も流れるように映し出す。

しかし、花が最後に、垣間見る幻想は、父がいて、母がいて、娘がいて・・・・という自分の家系にはなかった風景。

それでも前に進んでいく女の強さ、それに打たれる映画です。

 チャン・ツィイーは、どんな時代の服を着ても、すんなり着こなしてしまう器用さがありますが、母を演じたジョアン・チェンの不変さというのもはずせない要素です。女性は、若いときだけが「花」ではないのです。いつしか年をとり、その分理性と知恵をつけていく、そんな成長が出来る人、出来ない人というものをジョアン・チェンは、きちんと演じ分けていました。

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