ブレイブ・ストーリー
2006年7月4日 新宿厚生年金会館にて(試写会)
(2006年:日本:111分:監督 千明孝一)
夏休み前になると公開される映画、ファミリー映画、アニメ、ホラー映画のアニメの部。
原作の宮部みゆきさんのRPG好きというのは有名で、ICOというゲームのノベライズ小説なども書かれています。
しかし、私はRPGの世界は全くの無知なのでアドヴェンチャーアニメとして、観てしまいました。
主人公、ワタル(松たか子)が母を救いたいあまりに、紛れ込んでしまう世界。そこには謎の転校生、ミツル(ウエインツ瑛士)が、先に行った世界でした。望みをかなえてくれるという女神を捜して、宝剣の玉を揃えるべく、冒険に出るのでした。
そして出合う仲間たち・・・試練の数々・・・ステージをクリアしていく・・・そして・・・というのは、特にめずらしい話ではありません。むしろ語り尽くされた題材だと思います。
ちょっとひねっているかな、と思ったのは、影のあるミツルの存在。
私はアニメは好きなのですが、アニメ映画になるとどれだけ絵が綺麗か、テレビでは観られないような斬新な絵が観られるか、という所に注目しています。『クレヨンしんちゃん』くらいバカバカしいけれどあなどれない世界を持ってくると、赤塚不二夫的で逆の面で面白いと思います。
このアニメでは、背景などは立体3Dアニメで、人物になるととたんに平面的な2Dアニメ。その差が大きすぎて、ああ、美しい・・・と感嘆の声があがるほどではなかったのです。昔に比べれば、技術の向上というのは凄いものだと思いますが、贅沢な観客はどんどんそれに「慣れていってしまう」
昔、小林信彦さんがディズニーのアニメ映画『ファンタジア』について「観る側の生理を考えていない映画」と評されたのを覚えています。
これは、大人向けのアニメではなく、子供が楽しめるということを目的にしているので、そうなると、この上映時間は長いかもしれません。
アニメ映画というのは意外と観ると疲れるものなのです。
だから、子供向けアニメというのは、短編や短いものが多い。ディズニーの『ファンタジア』は私は子供の頃、観て長く感じたのですね。
長いな、と思ったら子供はもう、正直に飽きてしまう。
そして、こういう子供へのメッセージがストレートなものは、あまり凝らない方が逆に良いのかもしれません。
アニメと言えば、即、子供・・・というのはちょっと安直で、このアニメは幼児向けではなく、小学校高学年くらい、つまり主人公のワタルと同じくらいの年齢の子供たちなのではないでしょうか。意外と、観る年齢層の巾が狭いかと。
アドヴェンチャーものの児童文学では、「地図」がないとつらい、というのは天沢退二朗さんの話でした。
このアニメには地図がなく、主人公たちは、今、どこにいるのか・・・漠然としていて、あてのない感じがします。
声優さんについては、『スチーム・ボーイ』の少年の声を鈴木杏がやっていたように、松たか子の声は変声期前の少年の声に違和感はなく、またミツルの声、ウエインツ・瑛士の声も嫌味っぽい所が良かったです。こんな声、想像できなかったですね。
この映画に限らず、最近の日本のアニメ映画の絵は、人物の色合いに深みがなく平面的で、声があの独特のアニメ声。
これがたまらなく好き、という人はこのアニメも楽しめると思いますが、話自体はちょっと地味です。壮大なファンタジーを目指そうという努力があるのが見えてしまうのは、感心するか、疲れるか、どちらかなのです。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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