山椒大夫

山椒大夫

2006年8月30日 NHK BS

(1954年:日本:124分:監督 溝口健二)

1954年 ヴェネチア国際映画祭 サン・マルコ銀獅子賞受賞

 私は子供の時、『安寿と厨子王』の話を読んで、初めて「人さらい」という言葉を知りました。怖い話だと思いました。

 原作は森鴎外の『山椒大夫』今年は溝口監督の記念の年なので、特集上映がされていて観られて良かったです。

私の知っている安寿と厨子王は、安寿が姉で、厨子王は弟なのですが、この映画では、兄、厨子王、妹、安寿となっています。

 身分の高い家の厨子王と安寿でしたが、父と離れて母、玉木(田中絹代)と共に旅するうちに、騙され子供たちはさらわれ、山椒大夫の家の奴隷となる。

母は、引き離されて佐渡で遊女に売られてしまう。

 厳しい生活のうちにすさんでしまう厨子王と、優しさを失わない安寿。横暴な山椒大夫の屋敷での生活。

しかし、安寿は自分を犠牲にして兄を逃がし、兄は母を探すことになります。人身売買、奴隷として人間扱いされない事への深い洞察というのは森鴎外らしい題材のとり方です。

 しかし、映像は昭和29年のフィルムなのに、とても綺麗で音声もクリア。山椒大夫の屋敷の奥深さ。奴隷たちのくらす小屋が並ぶ壮大なセット。そして、佐渡での広々とした風景が、モノクロの映像でとても綺麗です。

 田中絹代の「安寿~~、厨子王~~~」という呼び声がいつまでも耳に残るような・・・監督は絵巻物のような映画を作りたいと言われたそうですが、本当に、巻紙から絵のついた物語が次々と繰り広げられていくようなスムーズな展開。

1シーンの長さを長くして、あまり顔のアップなどを細かく映さない手法。それがまた絵巻物のような映画だと思うわけです。

昔の映画だから、短いだろうと思ったら、124分もあってびっくりしたのですが、それでも目の離せない展開のさせ方はうなるほど上手いですね。

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