ようこそ、羊さま。
好大一対羊/The Great Two Sheeps
2006年8月24日 千石 三百人劇場にて(中国映画の全貌2006)
(2004年:中国:100分:監督 リウ・ハオ)
以前、腰痛肩こりで、整骨院に行っていた時に、お医者さんから、「ストレスというのはねぇ・・・例えば、犬飼うでしょ?これがあなたの犬じゃなくて、誰かから預けられた犬だったら疲れるでしょう。ストレスっていうのは間に人が入るって事ですねぇ・・・でストレス感じると肩がこり、疲れると腰が痛む訳です」と言われました。
この映画はまさに「ストレス感じる預けられた羊」の話です。
雲南省の山高い所にある貧しい村。寒冷地の為、土地には草も生えず、農作物もとれず、荒涼とした山村です。
それをお役人が見に来て、うむ。これでは大変だろう。外国産の羊のつがいを与えるので、畜産やってみなさい。
そしてやってきた外国産のお羊様。預けられてしまうのは、ターシャンという貧しい羊飼いの家になりました。
ターシャンは妻と二人暮らしでとても貧しい。でも、村長さん達は、お羊様に何かあったら大変だ!とターシャンをつつく。
人のいいターシャンは寒いから、家の中にお羊様の住まいを作り、家の中が殺風景だから、壁に赤い紙をはって、食べ物も草のあるところまで連れて行く、太らせる為に自分は食べられない卵や大豆をエサにする・・・・山の高い所に住む貧しいターシャンは、車、バイクどころか自転車も持っていないから、何かあれば、ぱたぱたぱたぱた・・・・砂埃を上げて走っていく。
村長さ~ん、獣医さ~ん・・・・ターシャンが広大な荒涼とした風景の中を砂埃を上げて走っている姿が何度も出てきて、最後には可哀想になってしまいます。ターシャンは、若くはない、むしろ老人なのです。役人が言うには、「村で老人の面倒を見てやらなければならない。村も貧しい。だから、羊の畜産をやらせましょう」
羊様だけでも大変な思いをしているのに、村の人々は「金出した訳でもないのに高級羊を手に入れられて、その世話だけしてればいいなんて・・・」と妬みやそねみの対象になってしまう皮肉。
でも、人のいいターシャンは文句を言わず、弱音を吐かず、お羊様の世話をする。しかし、厳しい自然環境の中で、だんだん羊たちは元気がなくなり、痩せてきた・・・食べさせれば、便秘だ・・・・役人にいい顔したい村長さんは、ターシャンをますます、つつく。
もう、ターシャンのストレス映画とも言えるのですが、やりたい、と言った訳ではないのに、押しつけられてしまったお仕事。
周りは、口ではなんとでも言える。さすがのターシャンも村長さんに「誰か他の人にかわってもらえないだろうか・・・」と言いますが、そうなると皆、嫌なんです。お役人が、次来る時には、よりよいお羊様の姿を見せなければならないというプレッシャーがだんだん強くなる。
そういう仕事ってありますね・・・・本当にそうだ・・・としみじみします。
自分はやるのは嫌だ、でも、そのやり方が気に入らないから口を出す。お役人は、次は子羊誕生を見たいね・・・なんて事まで言い出す。
もう、やめてぇ~~~~~~って言いたくなる所、ターシャンは困ったような顔をしながらも、ぱたぱたぱたぱた走り回る。
村長さんは悪い人か、というといい人でターシャンを妬む者をを叱る。若い獣医さんも、「外国産はわかんないけど・・・う~ん、でもいいですよ~」と協力してくれる(でも肝心な時に泥酔・・・とほほ)、学校の女の先生もターシャンに頼まれればかなり勘違いな事もやってくれるのでターシャンは孤立している訳ではないのです。奥さんもぶつぶついいながらも、羊たちの心配をするし、一生懸命。
仕事をするってどういう事?人の嫌がる仕事、でも誰かがやらなければならない仕事を押しつけられた時、どうすればいい?そんな時、どういう人が助けてくれる?
この映画のラストはその方法を教えてくれます。至福感の漂う「仕事の解決法」ですね。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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