黒い瞳
Ochi Chyornye/Dark Eyes
2006年8月21日 ビデオ
(1987年:イタリア:117分:監督 ニキータ・ミハルコフ)
この映画を観て、思った事は「贅沢って何?」
この映画で主演のマルチェロ・マストロヤンニは、カンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞をとりました。
確かに、このマストロヤンニの演技は「金持の世界の中の俗な人」を見事に体現していました。
20世紀初頭のイタリア。
1人のロシア人商人が豪華客船のバーに入ってくる。そこで、ある男に声をかけられる。「あなたはロシア人ではありませんか?・・・サバーチカ!!!」
そこから始まるのがこのイタリア人男の身の上話。
大銀行の一人娘(シルヴァーナ・マンガーノ)と若くして恋に落ちて、強引に結婚した男(マルチェロ・マストロヤンニ)・・・貧乏な商人の息子がいきなり金持に。しかし、実質、妻の一族からは軽蔑され、仕事もろくに与えられず、ただただ金持の生活を送っている「ダメ男」
ただ、この男はとても陽気でほれっぽい。そこら辺がまた上流階級の人たちの顰蹙を買っているのですが、したたかに贅沢をしている男。
妻とはもう冷め切っている。でも、離婚なんかしたら生活できない・・・逃げ出す為に、こじつけで病気の転地療養に行く・・・・そこで出合ったのが子犬を連れた黒い髪に黒い瞳をした美しいロシア女性。
転地療養ですから、病院なのですが、上流階級だけが入れる高級ホテルのような、毎日が園遊会みたいな上流階級の世界。
そこで、黒い瞳の貴婦人に猛烈アタックをする男・・・ロシア人女性が教えてくれたロシア語は・・・サバーチカ(子犬)
ここら辺のマルチェロ・マストロヤンニの猛烈アタックぶりというのが、病気のように?情熱的で、笑ってしまうくらい奮闘する。もうサービスたっぷりで、愛嬌たっぷりです。白いスーツを粋に着こなして、嘘ついても何してもアタックあるのみ。
しかし、全身から発する雰囲気は、「惚れっぽくて飽きやすい(そして、生まれつきの身分の高さは逆立ちしても得られない)」
イタリアに戻っても、忘れられず商売にこじつけてロシアに追っかけていく男。当時のロシアは、閉鎖的で外国人など簡単に入れない。
そこを、コミカルにテンポよく、ちょっと皮肉もまぜてロシアの大地に追いかけていく。
しかし、そこでの意外な再開と意外な別れ。そして皮肉な顛末。
贅沢というのは、身につくもので、金だけあればいい、というものではないのですね。それをこの映画は教えてくれます。
結局、贅沢が身につかなかった男。そして、最大の贅沢を手に入れた女。
セット、美術は贅沢をきわめ、上流階級生活を描いていますが、人々はどこかヒステリックで落ち着きがない。人々は、浮かれているけれどもじっとはしていられない。
何かしていないと安心できないようなざわざわとした不安を抱えているようです。
人々の浮ついた心持と同時にロシアの大地の広大な美しさも描ける・・・ソビエトのミハルコフ監督がイタリアに招かれて撮った映画ですが、ロシアへの皮肉、風刺の目というのもしっかり出ています。美しくて、哀しくて、可笑しい、ペーソスにあふれた映画です。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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