追憶の上海

追憶の上海

A Time to Remember

2006年8月20日 千石 三百人劇場にて(中国映画の全貌2006)

(1998年:中国:97分:監督 イエ・ティン)

 この映画の原作は実質主人公である、1930~1950年まで上海に滞在していたアメリカ人医師の回顧録です。

それを、中国の監督、香港からレスリー・チャンをむかえ、アメリカ人から見た中国を描いたという複雑な視線が交錯している不思議感がいいです。

 1936年、上海。外国人居住地では欧米人たちが上海生活を謳歌している時、中国では国民党と共産党反政府活動がぶつかりあっています。

本来だったら、「優遇された部外者」であるはずの若いアメリカ人医師、ロバート・ペインは、嵐の夜に突然美しい中国女性、チゥチゥ(メイ・ティン)の訪問から中国の姿を見るようになります。

密かに、往診した先には、反政府活動のリーダー、ジン(レスリー・チャン)が瀕死状態で横たわっている。

 そんな事から出合った3人ですが、気持のベクトルは見事に3方向に向いています。

ジンは、亡き美しい妻が忘れられず、チゥチゥはジンへの憧れから、疑似夫婦として活動している。そんなチゥチゥに心惹かれてしまうペイン。

好きな人から想われず、想わぬ人から想われる・・・

 この映画の上海のもうすでに退廃しきってしまっているような街の雰囲気。

そして悲劇。しかし、歴史的事実としては、ジンやチゥチゥが夢見た共産党が勝利。共産党の祝いのパレードを見ているペインにはすでにいないジンとチゥチゥの晴れやかな姿が見える。しかし、また歴史から言うと、このあと文化大革命という悲劇に突入する訳です。

一瞬の幸せ、このパレードのシーンがとても美しくて哀しい。早々と国外へ脱出する外国人たち。

ジンとチゥチゥの幻を見るペインだけが、その後の事実の目撃者となります。

ジンとチゥチゥは、悲劇なのか、幸せだったのか・・・最初は、気楽なペインの表情はラストには苦渋のものに変わります。

 台詞はほとんどが英語です。反政府活動のリーダーという役のレスリー・チャンは、カナダに留学していたという設定で、流暢な英語を話す。きちんと自分の主張をアメリカ人に話すジン。また、演説をするときの力強さ。亡き妻を思う時の憂い顔。レスリーはどちらかというと繊細な表情がとても綺麗な人なので、この憂いのあるキャスティングは良かったです。説得力があるのです。

 原作者は、1950年アメリカに帰国し、中国での思い出を書きます。だからこの話はある程度は実話なのでしょう。

原題の覚えておくべき時代、とは私には、あの共産党勝利の華やかで美しいパレードに集約されていると思います。

あえて、映画では、パレードのその後をあからさまに描かなかったのがいいですね。

そして、ラストのラストのシーンは現代の中国になります。これ斬新な方法なのか・・・迷う所ですけれど、映画という虚構を上手く使った驚くラストですね。 

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