去年マリエンバードで

去年マリエンバードで

L'annee Derniere A Marienbad

2006年8月17日 ビデオ

(1961年:フランス=イタリア:94分:監督 アラン・レネ)

 この映画を「白い薔薇の花びらのような映画」と淀川長治さんが表現されたのを覚えています。

 私は、学生の時リバイバル公開された時から、○○年・・・再見して、「白い薔薇の花びら」という表現が一番この映画をよく現わしていると思います。

非常に観念的な映画なので、つい、頭のいい人は形而上学的映画とか言ってしまうんですよね。

でも、びろうどのような手触りで、露をはじき、そしていてどこか肉厚で香りを放つ、薔薇、白薔薇の花びら・・・・もう、それ以上の説明はいらない。

 映画は、モノクロームで、ある宮殿のようなホテルの中とその庭園の中をカメラがなめらかに動いていく。

そこにいる上流階級らしい着飾った人々、またホテルのボーイなど・・・すべてが静止しているような印象を持ちます。

ひそひそと動いていた人々が、はた・・・と動きを止める・・・・それはストップモーションではなく出ている人々の動きが何度もはた、と止まる。

美しい人々からは生というものは全く感じられません。亡霊というより彫刻のような美しい人々。死を描いているのではないのですが、生という要素を全く取り払った広い豪奢な空間に流れる空気は死です。

 美しい人妻に恋した男は、人妻に言い寄る・・・一緒に外に出ようと。しかし、女性は一年後、同じ場所で会ったら・・・そしてモノローグで進む。ここでは時間は止まってしまっています。だから、去年は今になり、今は突然去年になる。

時間も空間も生も何もかも無くしてしまった映画。

そして、庭木が整えられた迷路のような庭園、庭園にある彫刻、そしてホテルの中でダンスをしたり、ゲームに興じる人々。

生活というものが全く描かれず、やはりそこに描かれるのは、「何もないけれど、豪奢な空間」その空間を作るもの、として宮殿のような建物をカメラはゆっくりと丁寧に隅々まで映し出す。

 この映画に残るものはかすかな薔薇の香りだけ・・・形も色もない香りだけ。私はこの映画は香りの映画だと思います。 

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