火の馬

火の馬

Teni zabytykh predkov/Horse of Fire

2006年8月10日 千石 三百人劇場にて(ソビエト映画回顧展06)

(1964年:グルジア:95分:監督 セルゲイ・パラジャーノフ)

 この映画は、パラジャーノフ監督の初監督作品で、私は昔、NHK BSの「グルジア映画特集」」で観ましたが、今回スクリーンで観られて良かったなぁと思います。

今現在、DVDも絶版なので、目にする機会はなかなかない映画です。

 原題は「忘れられた祖先の影」です。

パラジャーノフ監督が師事した教授の招きにより、ウクライナで撮影されました。

ウクライナのカルパチア山脈の山の民族のフォークロアをベースにしています。

親同士が仇の息子と娘が恋仲になりその悲劇・・・・といった比較的説明的な台詞があって逆に驚く前半。

しかし、だんだんとその2人の恋の行方は、幻想的になっていきます。

強烈な色使いと、山の民族衣装の鮮やかさ。そして残酷さ。山の厳しさ。そんなものをふんだんに盛り込んでいます。

ストーリー的な事は前半で終り、後半は愛しい人をなくしたイワンという青年の魂の放浪を描くようになります。

 山奥のロケが、大変綺麗です。イワンが、激流の上の大きな筏に乗っている姿を上からカメラが落ちるようにして撮る所とか、びっくりする一瞬の美。

パラジャーノフ監督の映画は、少ないけれどほとんどが固定カメラなのですが、この処女作では、結構カメラが動きます。

あの手、この手を試行錯誤しながら世界を作り上げる、という感じを受けます。

ここに出てくる教会というのが、キリスト教とはいえ、ちょっと不思議な雰囲気を持っています。かわいらしい教会なんです。荘厳というより、装飾といい、建物といい、西洋のキリスト教会とは全く違います。民族的なシーンがとても多い映画です。

 しかし、話は出稼ぎ先で女性に出合って結婚してもやはり、故郷の女の子が忘れられないイワンの苦悩。しかし、イワンの苦悩はどこに行っても救われない。ラストには、やっとやすらぎを見出したイワンを見つめる子供=天使。パラジャーノフの映画に出てくる子供は皆、天使として描かれているように思います。

8つの窓ガラスに8人の子供の顔が、画面一杯に映るラスト。

 ウクライナ当局はこの映画で、使用されているウクライナ地方のグツール語に固執、また、リアリズムを逸脱した宗教イメージに反発し、パラジャーノフ監督は、この映画以降、行く先々で迫害を受ける事になります。

このイメージの奔放さ、というのは他の誰にも真似できないものを持っている、と確信しました。

話が、映像が、宗教が、民族が、という以前に、脳みそに色彩が激突して、脳をぶるぶるふるわすような事をする人なんです、パラジャーノフ監督は。

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