ライブ・フレッシュ

ライブ・フレッシュ

Carn Tremula/Live Fresh

2006年8月4日 日比谷 シャンテ・シネにて(BOW30映画祭)

(1997年:スペイン=フランス:101分:監督 ペドロ・アルモドバル)

 原作はイギリスのルース・レンデルの『引き攣る肉』

それを、スペインにおきかえた5人の男女の愛憎復讐劇。

 映画は、1970年のスペイン、マドリッドのフランコ独裁時代から始まります。いきなり、陣痛の悲鳴をあげるペネロペ・クルスです。

当時は夜は戒厳令が引かれていたので、車がなく、通りがかったバスの中で、男の子を出産。

この話は美談となり、母と息子、ビクトルは、バスのフリーパスを市からプレゼントされる。

 そして20年後、母をなくした青年ビクトルは、ある女性に恋をしますが、てんで相手にされない。イタリア領事の娘であっても遊びまくっているエレナという女性の元に押しかけるビクトル。

所が、エレナとビクトルが、言い合っているのを暴行と勘違いした刑事、サンチョとダビデがかけつけ、銃の暴発により、ビクトルは刑務所に、足を撃たれた刑事ダビデは下半身不随となってしまう。

 6年の刑期を終えて出所したビクトルが目にしたのは、障害者バスケットボールの花形になっている、ダビデ。しかも、その最愛の妻とはエレナではないか・・・・・。もう1人の刑事、サンチョはアルコール依存となり、そんな夫から逃げたい妻、クララは、ビクトルと出合う。

さて、ここで主要な5人が揃いました。

 この映画はライブ・フレッシュ・・・・生きた肉・・・つまり肉欲の映画です。

憎み、復讐しようとする気持は、夫婦の裏切り、不倫という形をとって複雑にからみあっていく。

だんだん、5人の距離が狭まってくるその行き詰まるような展開が見事。

5人のそれぞれの策略は、誰に何をしても、誰かが不幸にならざるをえない、という状況を作り上げてします。

そこら辺がルース・レンデルの小説の要素をきちんともってきていて、この映画はとてもきちんとした作りになっています。

 肉欲の果てにあるものは愛などではなく、欲を満たしたという束の間の満足感だけであって、それは、長続きしない。

もっと、もっと・・・・と貪欲の底に落ちていく人々。

性欲というより、肉欲というのがぴったりするような濃厚なシーン、色合い・・・そしてそのシーンはとても美しい。

 すっかり良き妻、そして孤児院の院長として働くエレナの元にボランティアとして現れるビクトル。

そんなビクトルを疎ましく思う反面、半身不随の夫では満たせない欲望にもかられてしまう。

後に『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』など撮る監督らしく、男達よりも女2人の対照的な描きかたに力、入っています。

どちらかというと女の視線で描かれているようです。男たちの気持よりも女たちの気持の方が生々しく伝わってきます。

 しかし、映画は、悲惨な不幸な終わり方をしない。それぞれが苦しんだあげく、生き残るもの、去っていく者・・・そうして残された者は、過去と対峙しながらも生き続ける、というとても綺麗な終わり方をしています。

上質のミステリ小説を読んだ気分になる映画です。 

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