愛と死の間(はざま)で
再説一次我愛イ尓/All About Love
2006年9月20日 日比谷 シャンテシネにて
(2005年:香港:102分:監督 ダニエル・ユー)
この映画の原題を直訳すると「愛しているともう一度」なんですが、本当にそういう映画です。
いわゆる、愛する人、妻が死んでしまう・・・という映画で、もう語りつくされた感がありますが、この映画のいいところはとても落ち着いた雰囲気をずっと持っていて、変に盛り上げて、さぁ、泣いてください、泣いてくださいよっ、という押しつけ感が全くない事です。
アンディ・ラウは、多忙なあまり妻と時間がとれないまま、事故で妻を亡くしてしまった外科医と、その妻の心臓を移植された女性の夫のヘア・デザイナーの2役をやっています。
普通だったら、この2役をくっきりキャラクター分けてわかりやすくするところ、この映画では、違いはあえて出さずに、2人は時に同じ人に見えるように、外見を変えていない。もう、アンディは演技で勝負。
冒頭、時計が映ってカメラは秒針に焦点があたっていて、文字盤が回っているように映しています。
また、妻(シャーリーン・チョン)との思い出のフラッシュバックもいつの間にか時間が逆戻りしている・・・といった風に時間の描き方も特徴あって良かったですね。
そして、つらい事があっても、それをあまり顔に出さない演技がいい。わんわん、泣いて訴えれば、観客の涙を誘うのでしょうが、そこら辺はさらり、としていて、あえて涙は隠す・・・といった「涙もの」なのです。なんとも大人の雰囲気が漂っていていいです。
さらに心臓移植された女性(チャーリー・ヤン)は、移植手術が成功とは言えなくて、またアンディは、大切な人を失うの?という2重の悲劇もあるのですが、そこらへんもどっしり構えていて、ちゃらちゃらしたところがないです。
また、主治医がアンソニー・ウォンで、もう、この人は、吸血鬼から、飲んだくれの豆腐屋の親父から、優秀な外科医から、何を演じても様になる人です。
シャーリーン・チョンとの夫婦の仲の良さもいやらしくなく、また、妻の心臓を持った女性・・・にそっと接する様子など、繊細さもきちんと出しています。チャーリー・ヤンは、自分の命が・・・というよりも、周りに迷惑をかける・・・といった心労のあまり涙を流す・・・とか大人ですね。
ただの甘い涙ものを期待すると、あっさりしているようですが、大人の雰囲気がずっとあって、大人の映画って構え方がいい映画でした。
更夜飯店
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