出口のない海
2006年9月7日 中野サンプラザホールにて(試写会)
(2006年:日本:121分:監督 佐々部清)
映画やテレビドラマでセットや衣装、美術で一番お金がかかるのが、時代劇ではなくて、戦中~戦後の日本なのだそうです。
そういう意味ではこの映画、とてもお金をかけた映画です。
1945年、今からすればもう終戦間際に、海軍、人間魚雷’回天’で命を落とした若き兵士たちの悲劇です。
市川海老蔵は、意外な事にこれが映画、初主演。もう、とっくに映画に出ていたと思ったのですが、歌舞伎の御曹司はそうそう映画に出ないのですね。
戦友として伊勢谷友介。今年は伊勢谷友介、主演ではないけれど、助演男優賞ものの出演作の多さ。
また、香川照之も良かったですね。この人もたくさんの映画で、色々な役を演じきることが出来る役者さんだと思います。
市川海老蔵は、野球、伊勢谷友介は陸上で活躍したものの学徒出陣する。そして海軍に志願して、人間魚雷に乗る事にも志願する。
ここで、何故、彼らは志願したのか・・・ということを、あまりはっきり描きません。家族や恋人などとの話になっていきますが、あまりベタベタに泣かせようという空気はないので、自然と彼らは志願した・・・ともとれます。志願するのが当たり前だった、という事かもしれません。
では、何故、それが当然なのか・・・というところはあまり深くないのです。
私はこの夏、陸軍、ドキュメンタリー映画『蟻の兵隊』と、昭和天皇を描いた映画『太陽』、この2本を観ています。
この2本の観客への迫り方は、全く違うのですが、観る者を圧倒するものがありました。
その点、この映画は、弱いのです。だから、先の2本を観たか、観ないかで太平洋戦争というものへの考え、今の戦争を知らない世代からしたらイメージは、変わってくると思うのです。
この映画はどちらかというと昔ながらの手法で、戦争を描いています。素直にすんなり観られるかもしれません。
しかし、この回天という人間魚雷の仕組みなど説明され、訓練して、そして出撃・・・となるのですが、意外な展開にもなります。
本当にこれで日本は戦争に勝とうと思っていたのか・・・なんて思ってしまう、切なさというか、虚しさが出ていました。
先日、テレビで、戦後すぐの日本の男子の平均寿命は23歳だった、と知った時の方が、戦争って・・・・と考えさせられるものが大きかったかもしれません。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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