パトリス・ルコントのDOGORA

パトリス・ルコントのDOGORA

Dogora - Ouvrons les yeux

2006年9月5日 恵比寿 東京写真美術館ホールにて

(2004年:フランス:80分:監督 パトリス・ルコント)

 台詞も物語もない、音楽と映像だけの映画。

パトリス・ルコント監督は10年前から、こういう映画を作りたいと思っていたが、その勇気がなかった、と語っています。

エティエンヌ・ベルションの『DOGORA』という曲に出会い、実弟がいるカンボジアの風景に感銘を受けた監督が、曲にあわせ、カンボジアの風景を映していくだけ、といえばそれだけなのですが、観ていて、びっくりするのは、その音楽にぴったりと合わせた映像の編集の上手さ。

まるで映像で音楽を奏でているような完璧さを持っています。

 カンボジア、というと内戦や貧困といったイメージがあるかもしれませんが、ルコント監督が描いた世界は、「カンボジアを訪れた旅人が、そのめずらしい風景にびっくりしてあちこち、きょろきょろ見回している」というもの。

目に映る風景の全てがめずらしい。美しいものも、街の活気も、農村の風景も・・・異国の風景に圧倒されている旅人なのです。

 だから、思想的なメッセージは何もないのですが、そこに出てくる、一台のバイクに5人も6人も鈴なりになって乗っている人々・・間にはさまっている赤ちゃんは走りながら眠っている。そんな所に妙な生命力が見える。

また、水辺の家で、女の子が水の上の道をてくてく歩く様子を映す。それは潮が引いたときだけ出来るような小道。そして、その回りに高床式の家が建っている。そこを、ぱちゃぱちゃ・・・歩いていく女の子。このシーンとても綺麗です。

 そして農村に行くとトラックに30人くらいの人々が乗っているのですが、そこの中にいる少年の美しさ。よくこんなシーンを撮れたと思うのですが、さすがにどんな映像も構図がきちんと決まっているし、美しい写真集を音楽つきで観ているような気持。

 こういう映画は、もう、東京都写真美術館ホールでしかやりません。レンタルビデオにもならないでしょう(DVDはホールで販売されていました)以前、ここで観た『雲 息子への手紙』同様、私はこういう風景をきちんとみせる映画は好きなのです。

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