ワイルドサイドを歩け

ワイルドサイドを歩け

頼小子/Walking on the Wild Side

2006年11月25日 有楽町 朝日ホールにて(第7回東京フィルメックス)

(2006年:中国:89分:監督 ハン・ジェ)

コンペティション作品

 中国の山西省の炭鉱の町の3人の若者の刹那的な姿を綺麗事なく、ヒリヒリと描いた映画です。

プロデューサーはジャ・ジャンクー。オープニングタイトルが、ちょっとハリウッド風で、綺麗なのですが、綺麗なのはそこまで。

荒削りのようで、なんとも行き場のない若者、3人。二宝、流流、嘉平は、20歳前後ですが、仕事もせず喧嘩にあけくれているようなすさんだ生活をしています。

炭鉱の町の風景も荒涼としており、決して豊かな街ではありません。

 学校に行って金を巻き上げたり、親から金をせびったり・・・そんな生活ですが、学校での悪ガキを殴ったところ、殺してしまった・・・と思い込んだ3人はよく調べることもなく、逃走。とにかく逃げ出せ、とせっかちで何も考えていないような若者像です。

 しかし逃走した先でいいことがある訳がない。もともと責任感のない、つるんでいるだけの3人だから、結束が固いこともなく、すぐにバラバラになってしまう。

しかし、一人は最後、町に戻る。戻っても彼には何もないのです。

 甘い部分のない、まるでケン・ローチ監督が描く若者たちのようなヒリヒリ感が全体を貫いています。

先のことを考えたくても考えられない、希望が持てない、だから、今だけ、の生活になってしまう若者の姿。

 監督自身の10代の頃の思い出をベースにしたそうですが、監督が小学生の時、学校に若者が乗り込んできて喧嘩を始めた事があってとても衝撃的な思い出だったそうです。

この映画でも、小学生の男の子が事の成り行きを見ている。この小学生が監督自身なのでした。

 町に戻っても見えない将来。今の若者に将来はあるのか。メランコリックな運命から逃れられないのではないだろうか。そんな監督の憂鬱と危惧感がよく現われている映画で、甘さのない厳しさがパワフルでもありとても身に沁みる映画です。

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