オペラジャワ

オペラジャワ

Opera Jawa

2006年11月24日 有楽町 朝日ホールにて(第7回東京フィルメックス)

(2006年:インドネシア:120分:監督 ガリン・ヌグロホ)

 ジャワのオペラ・・・ということで、120分インドネシアのガムラン音楽を中心にして、台詞が全て歌という異色の芸術ミュージカル。

ガムラン音楽といっても監督によれば、ジャワ様式を使っただけであり、全てを古典音楽で通すのではなく、ブラジルのカーニバルやパプアニューギニアの儀式音楽の要素など、様々な要素の音楽を作り出し、曲の60%はこの映画の為のオリジナル曲なんだそうです。

踊りの振り付けも新しい曲にあわせて創作されたもので、古典の忠実な再現ではないそうです。現代舞踏との合体ですね。

 とても凝った美術にたくさんの音楽に激しい踊りに歌。色鮮やかな風景。たくさんのエキストラに幻想的なシーン、壮大なロケーション・・・・ですが、この映画、14日間で撮影された・・・というのに、一番びっくりしたかもしれません。

準備には3ヶ月かけたそうですけれども、もう映画作りの限界に挑戦って感じです。

毎年、東京フィルメックスは映画作りの限界に挑戦といった実験的な映画を上映するのですが、これは堂々とした音楽芸術大作映画にしか私には見えません。

 誠実な夫婦の間に割り込んでくる金持の男。美しい妻を自分のものにしようとする策略。これはインドネシアの古典劇『ラーマヤーナ』という物語をなぞるように話は進むのですが、色鮮やかな布、ヤシの実だけで作られた迷路、赤い布が道にずっとひかれている道路、床の上の無数の蓮の花をかたどったろうそくの灯り・・・大変、美術が個性的で優れています。

それに歌とダイナミックな踊り。海外でも活躍するダンサーやアーティストを結集させたそうで、ひとつの迷宮世界を作り上げています。

腕や指の動きなどは、独特のやわらかさを持った美しい踊りです。

その色合いは、どちらかというと油絵風かと思えば、残酷なシーンはあえて人形を使って表現したり、誰にも真似できない凄い個性です。

だからこの映画は観る者の力を、強力に吸い取ります。

観ている私は、うっとり気持良いのではなく、どんどん映画の迫力に自分の力が吸収されて、見終わった後、空っぽになってしまった気がしました。

 強引とも言える映画の吸収力をこれほど感じた映画はありません。

映画が、自分を楽しませてくれるのではなく、映画が観客の力を吸い取ってしまう、という力の強い映画です。

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