メン・アット・ワーク

メン・アット・ワーク

Karagaran mashghool-e karand/Men at Work

2006年11月24日 有楽町 朝日ホールにて(第7回東京フィルメックス)

(2006年:イラン:75分:監督 マニ・ハギギ)

コンペティション作品

 原案はアッバス・キアロスタミ監督だそうですが、実際は最初の出だしとラストだけで、間については何も案はなかったとの事です。

出だし、というのはスキーに行こうと車に乗っている4人の男が、山の途中で大木のような岩を見つける、というものです。

 最初は、車の中であれこれ喋っていた男達ですが、トイレに・・・と思って岩に近づくと、どうもこの岩、不安定でちょっと押したら動いて崖から落ちそうです。

しかし、手で押しても岩は動かない。おかしいなぁ~とあれこれやっているうちに男達はとりつかれたようにこの岩を動かそうとあれこれ試みるのを描きます。ロバに引かせようか、梃子の原理で動かそうか・・・なんだか仕事でも楽しみでもないのに、ムキになってしまう男達が可笑しい。

私も時々、何の役にも立たないことに妙に熱中して、後から考えて、あれはなんだったのかなぁ~と思うことがあります。

仕事も遊びも「自分のするべきこと」をきちんと隙間なく持っている人からは理解できない、隙間の気持。

 さて、このびくともしない岩。何を現わしているのでしょう。特に政治的、思想的な事は描かれません。

わかりやすく描いてくれたなら納得のいくストーリー映画なのでしょうが、そこら辺は監督は曖昧にしています。

そして男達の中にも心理の変化が現われてくる。でもひとりだけは、どうしてもやめようとしない。

 そんな男達の心理の動きを台詞に頼る部分が大きいのですが、監督は映画だけでなく哲学も学んだそうですから、いくらでも哲学的比喩を思いつく事は、できる人には可能だと思います。

不安定なようでびくともしない「何か」・・・その何かとは?色々考えるのもいいです。

私は、象徴的な事よりも、男達の心理の変化というのを面白く観ました。

スキーを楽しみに行く、というだけあって、男達はどちらかというと富裕層に思えます。そんな富裕層の人たちがつまづいてしまう岩の形がまた奇妙で、私もきっと気になって押したり引いたりするんだろうな・・・とちょっとくすくす笑ってしまうような人間戯画ですね。 

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