ハンモック

ハンモック

Hamaca Paraguaya/Paraguayan Hammock

2006年11月24日 有楽町 朝日ホールにて(第7回東京フィルメックス)

(2006年:パラグアイ=フランス=アルゼンチン=オランダ:78分:監督 パス・エンシナ)

特別招待作品

 とても静かな、静謐な映画です。

パラグアイの映画ですが、これがパラグアイだ、という描写はありません。

出てくるのも老夫婦2人だけで、台詞はなく、ナレーションのように会話が聞こえるだけです。

 最初は木と木の間に老夫婦がハンモックをかけにくるのをロングショットで映します。

老夫婦の会話からわかるのは、息子がボリビアとの戦争に行ってしまったこと。それに対して夫は楽観的だけれども、妻は悲観的である、という事です。もう、息子はとっくに死んでいるわ、といらつくような口調の妻。

そして、父がサトウキビ畑で働く風景。父と息子の会話。

そして、老夫婦の家。戦争が終わった事を隣人から知らされる夫婦。

そしてかまどのそばに座る母の横顔。伝令の兵士が息子の死を伝えに来る。

そして、夜が迫り、また夫婦は木と木の間のハンモックをはずして家に帰る。

 最初はロングショットだったのが、だんだん、人物に近くなり、母の横顔のアップになる・・・という人物へのカメラの近寄り方が面白いと思いました。

出てくる人物少ないし、シーンの数も少ない、台詞もない、観客はじっと風景を見つめるような形の映画です。

 特撮技術他、映画の技術が発達した現代、こういう映画を「稚拙で退屈」とひとことで言ってしまうことは簡単です。

しかし、だんだん、聞こえてくる話の中で、静かに母の気持は悲観的なものから、息子の死を信じない、という毅然とした表情に映る間のとり方とか、会話の間の「静けさ」これはやりそうでやらない、できそうでできない事だと思います。

 会話の間には曇り空がインサートされます。そしてだんだん空は暗くなり、ハンモックをはずす時はもうカンテラに灯りがともる。

老夫婦に残されたのは、木と木の間のハンモックだけです。未来を託した息子は帰ってこないでしょう。

しかし、夫婦は毅然としたまま、その静かな生活を続けていく・・・そんな静かながらも怒りのようなものが私には感じられました。

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