大菩薩峠

大菩薩峠

The Sword of Doom

2006年11月21日 京橋 フィルムセンターにて(第7回東京フィルメックス・岡本喜八監督特集上映)

(1966年:日本:120分:監督 岡本喜八)

 原作は中里介山の長編時代劇。映画は2時間あってもその第1部だけ映画化しているそうです。

 岡本喜八監督のユーモアはなく、しかし、テンポは映画が進む内に壮絶といっていいほどヒートアップしてくる時代劇巨編でありました。

仲代達矢演じる、机竜之介は、狂気の人であり、その剣はそのまま壮絶なる狂気の剣として実の父親さえ心配するほどの恐ろしい剣の使い手。冒頭、大菩薩峠で行き会った巡礼の老人をいきなり斬捨てる、という最初の5分でもう、狂気が炸裂。

 そして、時代は幕末。新撰組の芹澤鴨と近づいた竜之介はひたすら剣客となって情け容赦なく斬る、剣をふるったあとの残忍な笑み。

竜之介のせいで不幸になった人たちの運命的な出会いや対決も含めて、仲代達也のニヒリズムが、ダイナミックかつ繊細なモノクロ映像で走り抜ける2時間でした。

チャンバラというよりも刀で、人を斬る時にどんなに力がいるか、がよくわかるリアリティの重みをじっくり感じます。

仲代達矢の力のこもった剣と、決して体の芯がぶれない安定感。

 そして、新撰組の中でも派閥争いが起きて、芹澤鴨に近藤勇を暗殺しろ・・・と言われた時に御簾ごしにかつて斬捨てて、そして捨ててきた人々の幽霊の影が次々と浮かんでは消える。

御簾を斬りつけても斬りつけても、影は消えない。だんだん狂気の虜になった机竜之介のすさまじいまでの殺陣は、スタイリッシュであり、力強く、また、観る者を圧倒させる迫力があります。

 仲代達矢の冷酷、狂気ぶりがすさまじいほどの殺気をはらんでおり、その殺気は最後の最後に頂点に達する。

ここまでの殺気のある殺陣ができる日本の映画の技術とセンスは今観ても十分、見応えのあるものです。

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