エレクション2

エレクション2

黒社會2以和為貴/Election2

2006年11月20日 有楽町 朝日ホールにて(第7回東京フィルメックス)

(2006年:香港:95分:監督 ジョニー・トー)

特別招待作品

 いやはや、先日観たばかりの映画の続編を早速上映してくれるとはありがたい東京フィルメックスです。

 さて、話は2年後、再び会長選挙の時期がやってきました。

会長になったロクに対抗する強力ライバルは、少しだけ出てきた頭の良い若者だったジミー(ルイス・クー)

ジミーの最大の武器は「財力」です。中国本土で海賊版DVDで大儲けしたジミーは資産家となっており、自分はマフィアというより商売人である、と最初は謙虚に辞退します。

 ロクはロクで、会長の座を譲るのが惜しくなってしまい、「会長再任」という前例のないことを決行しようとする。

上手くいくかと思ったロクの目論見ですが、ジミーが中国での商売の利権を「会長になったら大目に見てやろう」と中国公安(!!)から迫られ、会長に立候補してきたことから、またまた、水面下での男の争いが始まってしまいます。

さらに、この争いに中国公安のスパイも潜入してくる。

 貫禄がついて、古風なロクに対して、ジミーは頭の切れる若者です。

そして、一度決めたら、ジミーはもう、手をゆるめない。どんどんどんどん凄い迫り方をしてロクを追い詰めます。

それが、もう、残酷というか、情け容赦がないというか。商売人は怖いですな。

 香港の事業が中国本土での事業になる、若者の台頭、古い固執からの脱却・・・・若いジミーは「古いものを一切排する」という実にクールで割り切った青年です。それなのにタイトルは、「和をもって、貴しとなす」なんですね。

 ロクの手下、子分たちを、金で、暴力で、恐喝で・・・恐怖政治をひいていく若者。ルイス・クーは、めきめきとう頭角を現していくという役が上手いし、頭良さそうでいて、貪欲でもあり、冷静でもある、という恐るべき若者をばりり、ばりりと演じています。だんだんルイス・クー脂ぎってくる・・・・

 ロクのやり方は長老達や子分の「信頼」を武器にしようですが、ジミーは金というもっと強大な武器。そして土台を固めていく。

そんなやり方は汚い、という言葉に対しては、長老のひとりは「犬がよってくるのは力があるからだ」といいます。ジミーは「ロクとの運比べだ」と腹をくくる。

 実は、力はあっても「運」がなかったのが、前回、会長になれなかったディーなのです。

では運とは、ただ待っていればいいのか?という疑問も起きるのですが、ジミーの「欲」のパワーの違いです。

ただ貪欲なだけでなく、タイミングをはかり、手をゆるめる、ゆるめないの強弱を巧妙に使い分け、押すところはとことん押し、邪魔なものは徹底的に排除する「力」が運を呼び、成功するという大変シビアな現実を見つめているようです。

 『エレクション』『エレクション2』共に、お遊び感覚のような娯楽性を一切排している、しかし事の成り行きに目が離せないという見せ方は、娯楽といってもいいかもしれません。

お遊び感覚ではない、とはいえ、ロクの手下のラム・シューが出てくるととたんにちょっとゆるむ笑いが出てくるところはやはりラム・シューは只者ではないですね。また、閉鎖的な部屋での長老達を映す照明、夜のシーンの美しさなど、いたるところでジョニー・トー節全開。

 男に焦点をあてて、女や恋愛という部分はあえて避けているのですが、いやぁ、女にだって女の戦いというものがあるのですけれど、そこはジョニー・トー監督、女には優しいのでした。

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