ヴィオランタ

ヴィオランタ

Violanta

2006年11月19日 有楽町 朝日ホールにて(第7回東京フィルメックス)

(1977年:スイス:95分:監督 ダニエル・シュミット)

ダニエル・シュミット追悼上映

 2006年8月に逝去されたスイスのダニエル・シュミット監督の追悼上映として2本が上映されました。

ダニエル・シュミット監督の映画は話を聞くと、どうも私が映画を観始めた頃、異色のヨーロッパ映画として人気があって影響を受けた人が多いそうです。

まだ、映画経験の浅い私は、知らない世界でした。今回が初めてのシュミット監督映画になります。

 まず、スイスというと観光的なイメージがあるのですが、では、よく知っているか、というと実は知らない遠い国です。

言語も、『ヴィオランタ』はイタリア語なのですが、もう一本の『天使の影』はドイツ語だったりします。

ヨーロッパの隣接した国の言葉をそれぞれ使い分けているのだそうです。日本ではあまり考えられないバックグラウンドです。

 舞台となるのはイタリアに接した山村です。そしてその村の秩序を守っている判事がヴィオランタという女性です。

娘ラウラの結婚式の前日、ヴェニスにいる継子のシルヴェルが結婚式のために戻ってくる。映画は、シルヴェルが、スイスに行くために水路をゴンドラに乗っているところから始まります。

 そして、ラウラは、シルヴェルと会って好感を持ち、実は血がつながっていないと知らないながらまるで恋人のように親しくなる。

ヴィオランタはそれを好ましく思わない。

 しかし、シルヴェルは、ヴィオランタが昔毒殺した夫の幽霊と話をしているのを見てしまう。そして、ラウラと山に行き、突然の嵐で入った洞窟には、昔死んでしまったはずの人々が次々と洞窟の暗闇から出てきてシルヴェルを驚かす。

 これも『叫(さけび)』と同じく、幽霊ものなのですが、もう普通の人のように出てくる。強引と言えば強引なのですが、それがとても自然という不思議感の出し方が、独特でいいですね。

何も、特撮に凝らなくても、いくらでも映画では幽霊は表現できるのです。

 またこの映画の特徴は顔のアップはなくて、胸から上のバストショットの連続という人物の撮り方です。

それが平坦ではなく、舞台的な効果をあげています。

そして、インテリアの中でもカーテンの淡い色合いと軽やかさがとても美しい。

シルヴェルとラウラが山の池のほとりで話すシーンでは、水面に鏡のように2人と馬が綺麗に映る。

ラウラの結婚式では、遠い丘の上の教会で鐘が鳴り、下の方では結婚式の行列が進むという構図が美しい絵のようで目を奪われます。

しかし、結婚式のパーティは即、そのままヴィオランタの葬式になる。誰もヴィオランタの死に気がつかない。

そんな風景を美しく描き出します。

 ホラーというひとくくりにはできない・・・夢か現か幻か・・・手ごわさを感じました。 

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