エレクション

エレクション

黒社會(Election)

2006年11月19日 有楽町 朝日ホールにて(第7回東京フィルメックス)

(2005年:香港:101分:監督 ジョニー・トー)

特別招待作品

 原題はずばり「黒社会」・・・ヤクザ組織です。そして英語のタイトルでもある「エレクション」とは立候補のこと。

ヤクザの組織の会長は2年ごと立候補者の中から選ばれる・・・という事がある、と言うのを知ったのはイーキン・チェン主演の『欲望の街』シリーズの4作目くらいだったと思います。世襲制とは限らないのです。

人気の出たシリーズも4作目となるとネタがなくなるなぁ、でもヤクザのボスを選挙で選ぶとはね・・・と興味深く思いました。

 この映画は、色々なジャンルの映画を作ってきた、特にアクションを取り入れた男映画の名手、ジョニー・トー監督が、変わりつつある香港の人々を描きたかった・・・ということから、「三合会」という香港マフィア組織のドラマに真正面から取り上げた、ヤクザもの、というより男対決映画です。

男と男が、はっしとにらみあって、目と目があったその刹那、こめかみから、ツゥーと汗がしたたり落ちるような男くささを「男汁」って言った人がいて、この映画はそんな男汁映画。

派手なアクションはなく、水面下で交錯する男達の思惑をじっくりしたカメラで追います。

組織の会長を選ぶ話だから、出てくるのは下っ端の若者ではありません。

それなりに実績をあげて、地位のある中年の男達です。

 その冷静さでもって一番、長老達から信望のあつい男、ロクがサイモン・ヤム。

強引さで、のし上がってきて、ロクに対決する男、ディーがレオン・カーファイ。

もう、この2人は、子分がたくさんいるから、自分で手を下す必要はない。

子分という駒をどう、上手く動かして自分の味方を増やし、敵を減らしていくか。

どんなやり方をしていくか?

そして会長の座を射止めるのはどちらか?

 ロクは一見穏やかで紳士。手荒い真似はしないのですが、だんだん、自分の会長への道の邪魔になるものを暗殺していく。

それが、色々な手を使うのですが、白昼堂々、長刀を持った男が街の中で、首を掻っ切るとか・・・おおっと大胆なこともするようになる。

サイモン・ヤムはどちらかというと警察とか、正義側の役が多かったのですが、どんどん自分の足元を固めていくのが、いかにも残虐な人相の男ではなく、インテリ風の紳士という意外性がいいです。

 そして、ディーの方は、コメディからシリアスまでなんでもこなす役者、レオン・カーファイが短気で、気が荒く、強引で騒がしい男、でもその暴れん坊ぶりが尋常ではないという破天荒な暴れ者というこれまた、違う役をやっていましたね。

 知性のロクと力のディー。そして、若い男達の中にはジミー(ルイス・クー)という頭の切れる若者がいる。

最後になって、ディーを説得したかにみせて、たたきのめすロクのシーンが凄い。

 そして、会長だけが持てるという木像、「竜頭棍(りゅうとうこん)」という文字通り竜をかたどった木像の奪回騒動も出てきます。

英語字幕では、'Baton'となっていて、バトン、ですか。確かに役目としては会長から会長へ譲られるバトンの役目なんですが、そのバトンの存在というのも面白い。別になくてもいいかなあ、なんて思うのですが、伝統やしきたりから逃れられない者は固執をする。

「竜頭棍」への固執と、伝統にのっとった儀式的なものへの固執・・・・古い体質がまだ残っている世界でありながら確実に新しい局面を迎えることを予感させて映画は終わります。

 派手なアクションはないのですが、かなり水面下でのやりとりが巧妙かつ暴力的でもあり、日本でも政治家の派閥、会社の派閥、人間関係の中で起きる群れの意識と共通するものを描いていました。サル山のボスザル状態って・・・そんな気もするんですよね。

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