独立愚連隊

独立愚連隊

Desperade Outpost

2006年11月18日 京橋 フィルムセンターにて(第7回東京フィルメックス・岡本喜八監督特集上映)

(1959年:日本:108分:監督 岡本喜八)

 今年、ドキュメンタリー映画『蟻の兵隊』を観た私は、ほとほと戦争の愚かさと残酷さが身にしみて、どんなに撮影凝って戦争映画にしても、なんだかどれも、嘘くさい美談のようなものを感じてしまうようになりました。

純粋に戦争映画を楽しめなくなった・・・と思ってしまったのですが、この映画は、さすが、実際戦争に行った岡本監督の「反戦、反骨精神が満ちていながらも娯楽として十分楽しめる映画」だったことに驚きました。

 終戦間際の中国戦線。一人で馬に乗って戦地を飛び回っているのが若い従軍記者の荒木(佐藤充)です。

そして、「独立愚連隊」と呼ばれる孤立した連隊がある、ということを知り、火の中へ飛び込んでいく。

 この火の中へ飛び込んでいく無謀さ、というのを佐藤充が魅力たっぷりに演じています。それはそれは魅力的で、ダイナミックで、活発で、良く言えば頭が良い、悪く言えば、とても狡猾な人物をイキイキと演じていました。

実は荒木があちこち飛び回るのは「面白いからさ」と口では言いますが、ある事件の謎を解きたいという動機がありました。

その謎の真実、というのも話のもうひとつの柱になってきます。

 ブラック・ユーモアを交えながら、荒涼とした大地を駆け巡る男。しかし、兵隊たちに対しては「どんな理屈をつけて死んでいいか、困ってるじゃないか」と言い放つ。戦争なんてなんてくだらないのだ、馬鹿馬鹿しい、という反骨の精神が貫かれています。

最近の戦争映画にないのは、この「反骨の精神」かな、と思いました。

家族や恋人との別離や、死への悲しみを強調しすぎて、本当の戦争の姿が見えなくなってしまっている。風景としては戦争や軍隊なんですが、どうにも「甘い」のです。本当に自分が戦争に行って来た世代の作る戦争映画は、とても骨のある、戦争とは、という説得力が凄い。

 しかし、映画のテンポはリズミカルで溌剌としています。クールなようで、人情味のある荒木、その荒木を慕う女。仲間になる人たち。愚かな軍の上官たち。何もわかっていない若い兵隊たち。そして土くれがばらばらばらばら頭の上に降ってくるリアルな映像。

戦争だけでなく、謎を解くミステリの要素もしっかりと盛り込んだ娯楽性。

とても人気が出て、続編が作られたというのも納得します。

 中国ではなく御殿場にセットを作って撮影されたそうですが、役者たちは泥だらけになって走り回る。随分と酷な撮影だっただろうな、と思うのですが、そういう所に監督の若さと反骨精神がみなぎっています。

 ラストは西部劇のようにちょっと浪漫的、ローマンターイになるので、後味もしっかり、すっきり。

こういう映画ってもう作ることはできないのでしょうか。

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