王の男

王の男

King And The Clown

2006年12月12日 TOHOシネマズ市川コルトンプラザにて

(2005年:韓国:122分:監督 イ・ジュンイク)

 なんとも根性のすわっった、反骨精神に満ちた壮大な映画です。

 王を描くのではなく、あくまでも身分が低い芸人2人が退廃しきった王宮の中で生き延び、翻弄されていく姿を、大がかりな美術、衣装、ロケーション・・・大作映画の風格は十分あります。

しかし、大作映画ながら、底に流れているのは「反骨精神」だという所が私の一番好きな所です。

韓国で人気があるのはやはり南北問題を扱った映画だそうですが、この絵巻物のような時代劇が去年の韓国映画賞を最多10部門受賞という結果になったそうです。

 16世紀初頭、旅芸人のチャンセン(カム・ウスン)とコンギル(イ・ジュンギ)は、綱渡り、音楽、踊り、歌、芝居、アクロバット芸・・・なんでもこなす幼なじみの2人。

芝居では、チャンセンが男役、中性的な容姿を持つコンギルが女役・・・をつとめるコンビ。

漢江という大きな町にやってきた2人は、この国のヨンサングン王が、堕落しきった生活、民は不満をつのらせているのを知り、仲間を集め、王と妓生だったものの王の寵愛を受け、やりたい放題のノスクを、強烈な下ネタでからかう芝居をうつ。

「王をあざ笑えば、金が儲かる」

 この芝居は、不満をつのらせている民たちの大人気となりますが、すぐに、王への冒涜ということで捕まって宮中へ。即、死刑?

しかし、何か腹に一物ある側近の大臣は、「(笑わない)王を笑わせたら許す」と言う。

 チャンセンとコンギルの芸はとんでもなく不遜なものなのに、歯車が狂ったような王は何を考えているのかわからない。

しかし、チャンセンはあくまでも、権力というものにひれ伏そうとはしない。

どんどん、狂った王は、旅芸人とのお遊びにのめり込み、宮廷内は大混乱。それまで王を独り占めしていたノスクも当然、面白くない。

権威的な父王の呪縛から逃れられない傀儡的な哀れな王。

権力に屈しない旅芸人のチャンセン。

チャンセンを慕いながらも、宮廷の策略にはまってしまうコンギル。

 このヨンサングン王、チャンセン、コンギル・・・この3人に加え、ファム・ファタール的なノスクの4人の演技の火花散る!というのを重厚な美術、撮影、ロケーションで堂々とした映画にしています。

チャンセンとコンギルの芸の数々が、映画の伏線になっていくあたり、そして、権力がなんだ、生まれ変わったらまた、旅芸人になる!という誇りを貫くのを一瞬でみせるシーンが、鮮やか。

 コンギル役のイ・ジュンギが、本当に女に嫉妬されるくらい美しく撮られていて(歯が真っ白)、芝居での胆の太さと王への憐憫という繊細さを出すのに、女性が演じたのでは出ない線の太さと細さが交互に出てくるような芸達者ぶり。

また、チャンセン役のカム・ウスンの捨て身!の芸も見所。

ヨンサングン王は、なんだか最後は哀れに思えるほど、シェイクスピア悲劇の王のような卑俗な王ぶり。

見所満載。骨太で、美しくて、お金の使い方の正しい例の映画で、権力をいつでも笑い飛ばしてやる、という反骨精神みなぎっている力作ですね。 

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