フラガール

フラガール

Hula Girls

2006年12月6日 シネカノン有楽町にて

(2006年:日本:120分:監督 李相日)

 「ディズニー・ランドと(常磐)ハワイアンセンターは違いますからね」

この李相日監督の言葉に、そうだなぁ、と思いました。

どちらも「アメリカ」を真似したものには違いないのですが、そのイメージするものは全く違います。

私が子供の頃(つまりまだ東京ディズニー・ランドがないころ)は、「常磐ハワイアンセンター」というのは社員旅行などでよく行くところで、人気があったのです。

目指す所が違うのですね。東京ディズニー・ランドは「アメリカ」をもってきた・・・のに対して、常磐ハワイアンセンターは、炭鉱でやっていけなくなった町が、起死回生をかけた自分たちで考え出した企画が実現した、というもので、ただ「ハワイ」をもってきただけではありません。

温泉がわくから・・・という理由しか映画では、何故、福島県のいわき市に「ハワイアンセンター」を作るのか・・・語られません。

 炭鉱の町・・・と言うと「さびれた」ってイメージがどうしてもするのですが、かつてはとても盛んだった産業だったので、金も儲かっただろうし、貧乏くさいことはなかっただろうと思うのです。

しかし、「上手くいっていたことが上手くいかなくなった」時、どうするか。

その境目に注目した所がこの映画の芯だと思うのです。

 ただ、フラダンスが全くできない女の子たちが、練習の末、上手くなりました・・・だけだったら、『スウィング・ガールズ』『Shall We Dance?』といった上達映画になったはずです。

やはり、信じられない強引なハワイアンセンターという企画に乗るしか、生きる手だてはない、という女の子たち(炭鉱娘たち)の必死の思いというのが、踊れるようになる喜びに重なるようになっています。

 その為に東京から呼ばれた平山まどか先生(松雪泰子)もなんだかうさんくさいのです。投げやりなんですね。

だから町の人々も信用しない。ついてくる女の子たちも最初は少ない。

平山まどか先生だけが、奮闘しているのかというと、実は、ハワイアンセンターの吉本部長(岸部一徳)が、とにかく奔走するからです。

この岸部一徳はよかったですね。

とにかく、進めなければ・・・・という必死さが随所に出てきます。

私がびっくりしたのは、まどか先生が怒って、男湯に乗り込んでいく所です。酒飲むわ、投げやりだわ、厳しいわ、すぐ辞めるといいだすわ・・・・でもこの男湯突撃シーンでまどか先生の思いがよくわかる、男気ある先生っていうのが、男性中心の映画を作ってきた監督らしい表現だと思うのです。

 そしてこの映画では、安直な恋愛は描かれません。

フラガールになりたいという早苗(蒼井優)は反対する母(富司純子)に勘当されても、やりたい、という。その兄が豊川悦司で、まどか先生を後には応援するようになるとはいえ、恋愛関係にはなりません。

そして、炭鉱の伝統にしがみつこうとする人物を、富司純子、炭鉱で働く男を豊川悦司、フラダンスにすがりつく女の子を蒼井優、ハワイアンセンターの設立に熱心になる男に岸部一徳・・・と役目をひとりひとりにピンポイントでライトをあてているように描いています。

 実際、ハワイアンセンターは成功するのですが、優雅なフラダンスのイメージからちょっとずれている、パワフルな炭鉱娘たちの激しいフラダンスのシーンは圧巻。そしてさすが、センターを踊る蒼井優は、映画を盛り上げます。

 ただの成功物語だけでなく、色々な背景や思惑をしっかり組み入れているというのがこの映画の特徴です。

どこか、ださいけど、楽しい・・・・こういうのは私の好きな「臭い」なのであります。

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