君も出世ができる
2007年1月14日 京橋 東京国立近代美術館フィルムセンターにて
(1964年:日本:100分:監督 須川榮三)
フィルムセンターでは歌謡・ミュージカル映画名作選というのをやっている中の一本。
1964年の映画ですが、この年はなんといっても東京オリンピックの年です。
日本中がイケイケゴウゴウの時代。
そのせいか、映画でもミュージカル映画の当たり年といわれているそうです。
岡本喜八監督の『ああ爆弾』もこの年に公開された映画ですが、風刺や反骨精神に満ちた世界というよりも、須川監督他がアメリカへミュージカルの視察に行った、というくらいだから、この映画は、ハリウッドの古き良きミュージカルの世界なのです。
といっても、これはタイトルでわかるように、サラリーマンもの。
アメリカのミュージカルをそのまま真似したのではなくて、日本ならではの「サラリーマンの世界」を歌と踊りであっけらかんと描く楽しいミュージカルです。サラリーマン哀歌(エレジー)でもいいような所でも、あっけらかんとした明るさが溢れています。
映画は、フランキー堺が朝、目覚めて会社に向かうまでを一曲の歌と踊りで、がつんと一発って感じで。。。
このフランキー堺が、もう、イキイキとテキパキと歌い踊るのですね。
フランキー堺ともう1人の主役、高島忠夫は、観光会社のサラリーマン。日本はオリンピック景気で浮かれていて、観光会社も海外からのお客さんの争奪戦を繰り広げています。
フランキー堺は、口が上手くて出世を目論んでいる、やる気満々のサラリーマン。しかし、後輩にあたる高島忠夫は朴訥な青年。
社長が益田喜頓なんですけれど、威張る訳でもないけれど、なんとなく品格溢れた社長です。
所が、社長はちゃっかり高級クラブのホステスを愛人にしている。紅子さんを演じたのが浜美枝。紅子さんの妙な高級感がいいですね。
そして社長がアメリカ帰りのバリバリのキャリア・ウーマンの娘、雪村いづみを連れてきて、観光課に配属させる。
フランキー堺によると出世には3つの方法がある。1・社長の娘と結婚する。2・労働組合の会長になる(って所がいいよね)3・社長の弱味を握る・・・・・・
社長の娘の出現に、しめしめと張り切るフランキー堺、アメリカ風のビジネスを徹底させようとする雪村いづみ、ぼーっとしている高島忠夫。
よく行く居酒屋のかわいい娘が、中尾ミエとキャスト、豪華です。
そしてちりばめられた歌と踊り。歌詞はなんと谷川俊太郎、音楽は黛敏郎。
羽田空港で、♪タクラマカ~ン♪とタクラマカン砂漠にいきなり想いをはせて歌う高島忠夫。
♪アメ~リカでは!!♪とアメリカ式ビジネスを歌い踊る雪村いづみ。
そしてフランキー堺は400人のサラリーマンをバックに歌い踊る。凄いですよ、センター、フランキー堺、うしろには400人のサラリーマン。
サラリーマンの背広が今と全く同じなので、妙にリアルです。インド人もびっくり(って古いか)
社長が愛人、紅子さん(会社では気品あっても紅子さんの前になると、ベベちゃん、ベベちゃんと鼻の下のばす益田喜頓がお茶目で爆笑もの)の存在=社長の弱味を握った、フランキー堺となんだかなぁ、と巻き込まれてしまうちょっと優柔不断な高島忠夫。
面白いのはやる気満々のフランキー堺に比べてあまり出世欲のない高島忠夫のキャラクターが、40年以上たった今のサラリーマンの姿にだぶることです。
自慢することなく、仕事が出来るけれど、なんとなくぱっとしないけれどいい男がもてる、って変わらないんだなぁ。
俺が、俺が・・・というよりも謙遜した態度を良し、とするみたいな。アメリカをそのまま持ってきたのではない所がいいですね。
高島忠夫と雪村いづみの「タクラマカ~ン」と「アメ~リカでは」が掛合いになるところのタイミングが絶妙ですが、フランキー堺と益田喜頓のコメディアンぶりも楽しい。
東京オリンピック前後の日本は私は知らないのですが、あまり古く感じません。
景気が良かったといえば80年代のバブル期もそうなのかもしれませんが、あの妙に価値観なくして浮かれまくっていた・・・という雰囲気とは違う、これからやるぞ、という前向きな姿勢がとても気持良く作られています。
フランキー堺という人は本当に芸達者。昔、テレビで(駅前旅館ものだったと思うけれど)フランキー堺が寿司屋の出前に行く時に、下駄はいてそのままタップダンスやる、というのに子供ながらびっくりしました。
もっとフランキー堺と益田喜頓の出ている映画が観たいですね。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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