恋人たちの失われた革命

恋人たちの失われた革命

Les Amants Reguliers

2007年1月21日 恵比寿 東京都写真美術館ホールにて

(2005年:フランス:182分:監督 フィリップ・ガレル)

2005年ヴェネチア国際映画祭 銀獅子賞(監督賞)受賞

 「素晴らしいベルトリッチの『ドリーマーズ』に対する返答であり、修正である」・・・というのが、ニューヨークタイムズ紙の評なんですが、確かにそうですね。

 この映画はベルトリッチ監督の『ドリーマーズ』が1968年の五月革命で映画が終わるのに対して、五月革命から始まります。

そして『ドリーマーズ』で、悪魔的な美しい双子の青年を演じたのがこの映画の監督、フィリップ・ガレルの息子、ルイ・ガレルでした。

この映画でもルイ・ガレルが主人公なのですが、『ドリーマーズ』とは全く違う雰囲気の青年です。

20歳の繊細な詩人。革命に参加するけれども、終わった後の倦怠のような雰囲気の中をひたすらさまよっている・・・・そんな感じです。

革命で、暴れた若者たちに残されたのは、麻薬、阿片などで退屈をまぎらわすかのような生活・・・・そんな中で詩人のフランソワが、彫刻家の女性、リリーと出合う・・・という恋愛物語のようです。

 前編モノクロでスタンダードサイズの映画。出てくる人々は、皆、貧しい芸術家たち。

そんな中でルイ・ガレル演じるフランソワはいつも白いシャツしか着ないけれど、そのシャツの白がモノクロならではの強烈な光のように映ります。

もう、革命を「語るだけになってしまった」若者たちの間で、フランソワとリリーは近づいていく。

しかし、この映画は、華々しい、イキイキとした若者たちは出てこない。憂鬱感をパーティや麻薬でまぎらわしている退屈な若者たち。

監督自身が五月革命で運動した若者で、今、息子がその年代になったので・・・ということですが、このルイ・ガレルが、もう彫刻のような顔立ちしてるんです。

横顔なんて憂いが、もうもう・・・という美しさ。20歳の美青年詩人、なんて下手すれば滑稽になりかねないし、普通の役者には出来ないと思います。

しかし、ルイ・ガレルは儚げでありながら強烈な印象を残し、知的なムードも出しています。

貧しい若者とはいえ、皆、着ている洋服の着こなしがお洒落でお見事。

リリーとフランソワが道を歩いている、というシーンだけで、とても綺麗な絵になっているのです。

 『ドリーマーズ』は革命へどんどん若者は流れていくけれども、この映画では、若者たちにハッキリとした行き先が明示されない、という所が、本当に体験した監督による修正、なのだと思います。

共通点はあるのだけれど、全く別の映画で比較のしようがないですね。

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