不都合な真実

不都合な真実

An Inconvenient Truth

2007年1月23日 TOHOシネマズ市川コルトンプラザにて

(2006年:アメリカ:96分:監督 デイビス・グッゲンハイム)

 学生の時を思い出すと、授業が面白い先生とつまらない先生というのが必ずいました。

もう、究極のつまらない先生は中学の時の歴史の先生。

教科書に書いてあることを、黒板の端から端まで同じことを書くだけ・・・という恐ろしい授業。

反面面白かったのは、高校の時の世界史の先生。歴史上の有名な人物のエピソードなどを、真面目な顔してえんえんと話たりします。

健啖家・・・という言葉を覚えたのはこの先生からです。チャーチルは大変な健啖家だった・・・健啖家って何か?という話になります。

または、地理の先生の話。黒澤明監督の映画『七人の侍』の話を1時間してしまうとか、そういう語り手としての上手さを持っている先生というのがいました。不思議とそれが地理の勉強につながっていて、別に世間話をしているわけではないのです。

そして私がどんな先生でも駄目だったのが、いわゆる家庭科の栄養学です。食べ物を全て数字(カロリー)にする、というのは本当につまらない。後に資格をとるために栄養学の勉強をすることになってしまいましたが、相変わらず数字の羅列でうんざりしました。

 このドキュメンタリー映画は、アメリカ元副大統領で、大統領選挙でブッシュ大統領に破れたことで有名なアル・ゴア氏による地球温暖化のスライド講演の様子です。

次々とでるスライドはもちろん、過去のデータの羅列ではあるのですが、数字嫌いの私にも「へぇ~~~~」と思うような「おもしろい授業」でした。

地球温暖化・・・とひとことで言っても具体的にどんなことで、どんなことが起きるのか・・・今、地球では温暖化によって何が起きているのか、そのためには何をしたらいいのか・・・・お堅いようで、さすが人前で話しなれている人の喋り方は魅力的で、スライドの構成と話の上手さを見せることによって、真面目な問題提起をしています。

政治家というのは、人前で話すという演技力が必要なのですが、ゴア氏の話し方は上手いのです。

もちろん危機を叫んでいるわけですけれども、そこに根拠となるものをたくさん用意しているから、スムーズに地球のここでこうなると、別のところでこうなる・・・ということが明快にわかるのです。

 ゴア氏の目的は、地球温暖化の危機を訴えることですが、反面、政治家としての苦労なども出てきます。

特に、ブッシュ大統領に敗れた時のことは、大変ショックだったようです。

そして、「テロだけが、敵ではない」と言います。何故、テロが起きるのか・・・それを自然破壊という視点からとらえていたりします。

そういわれるとナルホドなぁ、と思うのです。

そして、今のアメリカの傲慢さを説く。このままアメリカが傲慢を続けるとどんな事がおきるか・・・といった政治的な意図もちらりと見えたりします。

タイトルの不都合な真実というのは、政治家にとってこの問題はとても耳の痛い問題で誰もが避けたがるものだからだそうで、政治の場で訴えてもさっさと切られてしまうところも出てきます。

 映画の作りとしては、あくまでもゴア氏は公明正大潔白な人物である、という迫り方をしていますが、モノローグで「どんなにわかりやすく話しても全く理解してもらえない・・・」というつぶやきもあります。

アメリカだけでなく、世界を回って講演を続けるという姿に、地球温暖化だけでなく、個人の生活のあり方、考え方までも、疑問を呈しているのがただのお説教ではないですね。押し付けではなく疑問の提示で押さえているのがギリギリセーフという感じもします。

話の上手い先生の授業を受けた・・・という印象が残る映画です。

地球温暖化について興味ない人にこそ、観て欲しい映画です。

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