どろろ

どろろ

2007年2月11日 TOHOシネマズ市川コルトンプラザにて

(2007年:日本:138分:監督 塩田明彦)

 私が子供の頃、好きだったのは何と言っても手塚治虫のアニメや漫画でした。

絵がかわいく綺麗(『リボンの騎士』や『ワンダー3』など)で、上品さがあったのが好きでした。

しかし、その後、10代になって『火の鳥』や『どろろ』といった漫画に出会い、『アドルフに告ぐ』なども読むと手塚治虫の世界の広さに驚くのでした。しかし、やはり手塚治虫はどんな悲劇でも、SFでも、歴史ものでも、上品さがあります。

そして同時に惹かれていたのは、白土三平の迫力のリアリズム『カムイ伝』や『サスケ』といった漫画でした。

ただ、白土三平と手塚治虫の世界は違うものだと思います。

 『どろろ』は全3巻のを高校生のとき読んだのですが、大変衝撃を受けました。

テレビアニメ版は年代的に見ていません。

そして今、二十一世紀になって・・・・この「体の48ヶ所が欠損しているのを妖怪を倒しながら、体を取り戻していく」という設定は映像化は無理な原作NO.1だろうなぁ、と思っていたのですが、堂々と映画になってしまって、びっくりです。

もちろん、手塚治虫ならではの医学的な真面目なアプローチなのですが、でもなぁ、やはり・・・・言葉が規制されてるのに、映像では・・・。

 原作と設定を多少変えても、基本の部分は変わっていないですね。

どろろが原作では子供を柴咲コウが演じていたり、日本の戦国時代を、日本のようなどこかの国、過去か未来かわからない時代と曖昧にした所、妻夫木聡の百鬼丸は、原作では14歳だけれども、19歳くらいの男の子で、ちょっと線が細め。

しかし、他の部分、妖怪を倒すたびに、体のどこかが復活する・・・その時、百鬼丸が苦しんで苦しんで、まるで自分を傷つけているように苦しみながら、体のひとつひとつを取り戻していく。

 そして感心したのは、百鬼丸というのは、最初は目が見えない、暗い雰囲気の青年なのですが、とても美しく撮っているということです。

あまり表情がないとはいえ、伏し目がちな所とか、目が見えないときのどこかを見ているような目、体の動き、衣装、アクション・・・とてもキレがあって、影があって美しいなあ、と思いました。

ここまで妻夫木聡を女優さんのように、女性的に綺麗に撮っていることにびっくりです。

柴咲コウの元気さも、ちょっとカラ元気のような所が、哀しくて、悔しいって顔が、男の子っぽい。

まさに原作の『どろろ』の、手塚治虫の上品さ、を出していると思うのです。

 また、中井貴一の父、醍醐景光が、自分の欲の為に、子供の体を妖怪たちに売り渡すのですが、後半は、多宝丸(瑛太)や母、原田美枝子など、家族の話になるというのも、現代的なものも持ち合わせています。

 美術や衣装が綺麗だなあ、と思ったのですが、コンセプトデザインは正子公也。衣装は黒沢和子。

ロケは、ニュージーランドでしているそうですが、荒涼とした国が、日本でもない不思議の国の様子を出していました。

ワイヤーアクション他、香港のチウ・シントンもアクション監督として参加。

綺麗な絵で、綺麗な見せるアクション・・・・こういう作り込まれた世界は、荒唐無稽かもしれないけれど、とても好きな世界です。

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