ユメ十夜

ユメ十夜

2007年2月12日 渋谷シネアミューズ・ウェストにて

(2007年:日本:100分:監督 実相寺昭雄他)

 私は、夏目漱石が好きなのですけれども、数ある著作の中でやはり好き嫌いがあって、この映画の原作となった『夢十夜』は、読んだことは読んだけれども、特に思い入れある、愛する本ではありませんでした。

 『夢十夜』は「こんな夢をみた・・・」で始まる夢の話ですから、つじつまは合っていない、不条理な訳のわからない部分も多いだけに、インテリさんが、タルコフスキーやゴダールの映画を目をつり上げて分析して、ふりまわしてみせるように、この『夢十夜』を分析したがる・・・インテリさん自己満足本領発揮できる良いテキスト、みたいな感じを受けます。

 私は、分析とか、嫌いですから、この不思議な世界を不思議な世界と素直に受止めていただけです。

夏目漱石は、書いてある事もいいのですが、何よりもその文体が、気持いい「耳から入る文学」なんです。

異論のある方もいると思うのですが、私にとっては、夏目漱石は理屈よりも、文章のリズムの美しさ、なんです。

不眠で悩んでいた時期があって、夜、眠れないとイライラするので、『草枕』の朗読テープをずっと聞いていて、『草枕』はほとんど暗記してしまいました。朗読の日下武志さんの声も良かったのですけれど、なんとも聞いていてうっとりする文章。そんなこともあって、音の美しさを優先させて読んでいます。(風間杜夫朗読の『坊っちゃん』も良かったです)

 

これは、100分で10話ですから、一話約10分で、10人の監督が第一夜から第十夜までを、連作短編にするという企画ものです。

といっても、若い監督などは、もう原型をとどめていないくらい変えてしまっているので、うろ覚えの私は、観ながら・・・ううううう~~~ん、どうだったけ、どんな話だっけ、こんな話あったけ?と喉まで出かかっているのを首をひねりながら観ていました。

 興味深かったのは、次々と出てくる監督の名前ですね。

原作マニアの方は、監督が誰?なんて全く関係ないでしょうから、これは良い、これは悪い・・・と好き嫌いを存分にご自身の場で語ってください。

最初が実相寺昭雄監督で・・・おお、と思い、次に市川崑監督・・・・おおおお・・・ってな感じです。

若い監督は、ジャパニーズホラーの監督が何人かいて、知らない人もいました。

 以下、監督の名前を挙げておきます。

第一夜:実相寺昭雄

第二夜:市川崑

第三夜:清水祟

第四夜:清水厚

第五夜:豊島圭介

第六夜:松尾スズキ

第七夜:天野喜孝、河原真明(アニメーション)

第八夜:山下敦弘

第九夜:西川美和

第十夜:山口雄大

 映画観終わったあと、原作を読んでみたのですが、原作通りなのは第二夜の市川崑監督くらいで、後は自由にエッセンスをとりだし自分の世界を作っていました。日本映画をよく観る人には、おおおおっていう監督の連続ですね。

原作読み終わって感心したのは、実は、第七夜のアニメーション。しかも台詞英語。この話は全く忘れていたので、後から読むと、おおおって思いました。

 原作にあまりに思い入れのある人は、怒りまくるにちがいないということをあえて、監督に自由な世界を作らせたプロデューサーの英断というのも思いました。

山下敦弘監督がこういう世界を作る人とは思わなかったよ・・・とか。松尾スズキの演劇的な要素に感心したり。第十夜のパナマ帽かぶった色男、庄太郎を松山ケンイチがやっていて、笑ってしまったり・・・意外とぴったりしていますよ。

 原作にしても、それぞれの監督の世界にしてもマニアックな映画です。

毎年、マニアック映画大賞!みたいな映画にぶつかるのですが、今年のマニアック映画大賞はこれにほぼ決定です。

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