ラスト・キング・オブ・スコットランド

ラスト・キング・オブ・スコットランド

The Last King of Scotland

2007年3月13日 有楽町 スバル座にて

(2006年:アメリカ=イギリス:123分:監督 ケヴィン・マクドナルド)

 わたしはウガンダのアミン大統領のことはあまり知りませんでした。

映画の最後に実際のアミン氏というのが出てきますが、この映画でアミン大統領を演じたフォレスト・ウィテカーは、実際のアミン大統領よりも精力的に見えてしまうほど、この映画での存在感は大きいです。

今年の映画祭、映画賞の主演男優賞を総なめにしたフォレスト・ウィテカー。

しかし、わたしは、この映画の語り手となる若きスコットランド人医師、ニコラス・ギャリガンを演じたジェームス・マカヴォイの熱演も、見所だと思います。

 1971年、スコットランドの医学部を卒業してウガンダの村の医療施設に派遣されたまだまだ若い医師。

その目を通じてみえるウガンダの様子はまるでドキュメンタリー映画のよう。

 そんなとき、前オボテ政権が破れ、新しく大統領になったイディ・アミン大統領の演説を聞いてそのカリスマ性に驚き、偶然のことからアミン大統領の主治医にあっという間になってしまう。もとボクシングチャンピオンだっという大きな体で、立派な演説、そして気さくな陽気な雰囲気。

本当に国の民のためにわたしは、立ち上がるのだっという強烈なアピール。

 しかし、大統領といってもほとんど独裁者。

気に入られるとなると、もう、いたれりつくせり・・・・医学のことだけでなく政治的なことまで「ベスト・アドバイザーだ」と喜ばれ、ギャリガンも最初は「自分が役にたっている」という満足感でいっぱいの前半。

 しかし、政治の世界、特にアフリカの不安定な政治の世界に門外漢がただの個人的なお気に入り・・・だということだけで側近になることを誰もが歓迎するわけではない。

だんだん、アミン大統領の影の部分、独裁者としてのわがままな部分、気まぐれな部分・・・を知るようになり、周りにも不穏な空気がばんばん流れだし、スコットランドに帰りたい・・・・といってももう遅い。若気の至りで、火の玉に触れてしまい、大やけどをおってしまう外国人の若者。

「わたしはお前の父だ。お前はわたしの子供だ」と時に脅かし、時に陽気におどけて、アミン大統領はギャリガンを離さない。アメとムチですね。

もう、傲慢な独裁者だけなら、即、逃げ出すところ、アミン大統領は、権力を行使するかと思えば、情に訴え、ギャリガンをつかまえて離さない。

 しかし、とうとう四面楚歌になってしまった時、ギャリガンの起こした行動。そしてその報い。

「お前は、わたしを裏切った」と言うアミン大統領に、ギャリガンは、「あなたは子供だ。それが怖い」と言う。

ギャリガンの眼はだんだん、いつも恐怖の色を浮かべるようになります。

アミン大統領の派手なパフォーマンスにもうんざりだ・・・・英国人から聞かされる、アミン大統領の非情な政策の事実・・しかし、逃れられない・・・。

 これは実話をもとにしていて、実際アミン大統領の周りにいたイギリス人の事で、最後にはもう脱出は出来るものの・・・・それを知ったアミン大統領は、一筋の涙を流す。

嫌になったら出ていってしまえばいい。離れてしまえばいい・・・自分の国に帰ってしまえばいい。

残された者などどうでもいい。

欧米諸国が過去、アフリカで、アジアでしてきたこと・・・植民地化し、戦争を起こし、そして引き上げてしまい、干渉だけはする・・・今でも続く国の間の溝のようなもの・・・もちろんそれはアジア諸国の中の日本も含みますが、のぞきこむような気分になりました。

 孤独な独裁者、仮面をつけた力のあるもの。ウガンダはイギリスの支援を受けて独立しているため、アミン大統領は、イギリス・・・スコットランドびいきというのもギャリガンを気に入ったことなのでしょうが、パーティの席などでスコットランド民族衣装をわざわざ着て、今や、わたしは最後のスコットランドの王である・・・と公言して悦にいっている姿がとても哀しい。憧れとも、コンプレックスともとれる・・・独裁者の光と影なのです。

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