今宵、フィッツジェラルド劇場で

今宵、フィッツジェラルド劇場で

A Prairie Home Companion

2007年3月20日 銀座テアトルシネマにて

(2006年:アメリカ:105分:監督 ロバート・アルトマン)

 ロバート・アルトマン監督、2006年11月死去。

わたしが、名画座などをめぐって映画を観て歩くようになったのは高校生からですが、高校時代、印象に残っている映画は、というとロバート・アルトマン監督の『M★A★S★H』とブライアン・デ・パルマ監督の『殺しのドレス』というアメリカ映画だったりします。

名画座で、ヴィスコンティもフェリーニも好きだったけれど、遠い日本の国の一高校生を熱狂させて何回も名画座に足を運ばせたのはこの2本です。

 巨匠と言われるのにはわたしはどうかな・・・と思うのですが、意外とヒット作ばかり撮っていた訳ではなく80年代は沈黙していたくらいで、ロバート・アルトマンが好き・・・という人はある程度の年齢かもしれません。もう歳ばれてもいいですけれどね。

『M★A★S★H』(または『ナッシュビル』)を持ち出す人は、40代以上・・・とお考えください。

 とにかくわたしの印象は、大勢の人がいっぺんにがやがや喋るので、字幕が苦しい・・・。

群集劇を撮らせたらロバート・アルトマンでしょう、やっぱり。

そこには、アメリカのバカバカしい笑いとカントリーミュージック・・・・音楽を愛し、役者が楽しそうで、早口の英語のヒアリングが出来なくて苦しい思いをしたわたしですが、基本的にはアメリカ人による、アメリカ人のための映画・・・ただし、それはアメリカの大義など持ち出さず、役者と作り手が一緒になって、それが大女優と言われる人であっても、楽しそうに歌を歌い、おしゃべりに興じる・・・そんな雰囲気がうらやましくて仕方なかったのです。

 この映画で出てくるのは、アメリカのラジオ番組。フィッツジェラルド劇場で生中継される音楽コメディ番組。

この『プレーリー・ホーム・コンパニオン』というラジオ番組は30年以上たってもいまだに人気のラジオ番組なのですが、映画では経営難で、劇場がテキサスの大企業に乗っ取られ、最終回を迎える・・・という設定。

 この映画の原案、脚本、実際に実名でラジオ番組の司会をするギャリソン・キーラーの芸達者ぶり、歳のいったカントリーデュオ姉妹にリリー・トムリンとメリル・ストリープにするとか・・・結構、怖いことも軽々とやってみせます。さすがですな。

 色々な人が出たり入ったりしながら、番組は続きますが、誰も最終回・・・ということには触れようとしないし、とんだハプニングがあっても司会のギャリソン・キーラーはとにかく番組を続けること!と威張ってはいないけれどプロ根性で強気。

こういう、威張っていないけれど強気の人がたくさん出てくる・・・というのも特徴のひとつかもしれません。

 フィッツジェラルド劇場は作家のフィッツジェラルドからとられた中西部の人間の誇り・・・を、無粋なテキサス人が乗っ取って・・・というところで実際、テキサスの実業家が、テキサス男優、トミー・リー・ジョーンズだったりね。

 しかし、昔のがががが~~~っという勢いはおさまって、丸くなったといいますか・・・それは『ゴスフォード・パーク』あたりから感じ始めたのですが、この映画では、ケビン・クラインの演じるガイ・ノワールという私立探偵の男と、白いコートの謎の美女・・・なんてあたりは、カントリーミュージックを楽しげに演奏している裏で、ハードボイルドの世界をやっているようで良かったですね。

それも、いかにも格好つけようとしているガイ・ノワール(大体、この名前がすごいですよね、漫画みたい)がわたしは結構お気に入りなんですけれど、アルトマン監督らしくない、と言われる方もいるかもしれません。

 しかし、この映画はなんだかんだあっても至福感に満ちています。

そして、新しい出発にむけて、ケロリ、サッパリとしているのがいいです。メソメソしたりしないで、ケロリンとしているのです。

なにがあってもケロリン、は変わってないな・・・とわたしはひとりにんまりしました。

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更夜飯店

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