サンシャイン 2057

サンシャイン 2057

Sunshine

2007年4月20日 有楽町スバル座にて

(2007年:イギリス:108分:監督 ダニー・ボイル)

 ダニー・ボイル監督って、次何を繰り出してくるのか、全く読めない監督ですね。

この映画を観て、『トレインスポッティング』と同じ監督だ、と言われてもピンと来ないというか。

だから、ダニー・ボイル監督の映画を過去の映画を引き合いに出して語るのは難しいです。

 この映画は、アメリカ・ハリウッド大作だったら、こういう風になるんだろうな・・・という予測をどんどん裏切っていく映画ですね。

知らず知らずの内に、ハリウッド映画式SF大作のルールをあてはめようとしている自分に、特に後半気がつきます。

 裏切られるといっても、がっかりではなく、ほう、こうきますかっ、というもので、まぁ、ハリウッド映画だったらここは派手にするところ、さらりとかわしてみせたり、設定としては、SF映画です。

滅び行く太陽をもう一度太陽にするために、宇宙に出たイカロス2号。

乗組員は、8人のエリートたち。

キャプテンが真田広之、太陽再生の鍵を握るのが、物理学者のキリアン・マーフィ、生物学者のミシェル・ヨーお姉様は、宇宙船内で酸素を作り出す・・・ということで、木や草を育てている。

人種も色々、役割も色々なクルーたち。

 クルーたちは、地球の滅亡を防ぐために選ばれた者たちだから、安直な恋愛物語など起きません。

そして、7年前に音信を絶ったイカロス1号の存在、というのも大きな問題となり、イカロス2号はどんどん追いつめられていく。

 様々なアクシデントが起き、それをクリアするとまたトラブル・・・限られたスペースに押し込められた8人はいつも和気あいあいではありません。自己主張があり、譲り合いがあり、といった人間関係ドラマに近いですね。

 キリアン・マーフィは、おとなしくていつも悲しげな目をしています。

しかし、プライドが高くて、かっとなると手がつけられない若者。

イカロス2号の本当の目的の鍵を握っているのはキリアン・マーフィだから、どうしても優先せざるをえない。

頭でわかっていても、気持が納得いかない他のクルーたち。キリアン・マーフィもそれを十分、承知した上で、そんな「つらい立場」を貫いていく後半。

 この映画は特撮とてもいいのですが、宇宙船を出た人間の小ささ・・・というものを際だたせていて、塵、というのがひとつのキーワードになるのですが、宇宙の壮大さに比べれば、ひとりの人間の存在なんて塵のようなもの。

しかし、映画はそんな塵のような命に焦点をあてています。

 地球に残した家族とのやりとりをえんえんと描いたりしないところもいいです。

地球の人間が、宇宙を支配する・・・といったアメリカのSFの定石観念を見事にかわしてみせる映画。

 この映画を観たあと、ジェイムス・ティプトリー・ジュニアのSF小説『たったひとつの冴えたやりかた』を思い出しました。

この映画の自己犠牲というもの、そしてたったひとつの方法に賭ける人間の姿・・・そんなものが重なって思い出されたのです。 

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