BRICK ブリック
BRICK
2007年4月22日 渋谷シネ・アミューズにて
(2005年:アメリカ:110分:監督 ライアン・ジョンソン)
映画って不思議だなあ・・・と思う時があって、それはこの映画もわたしにとっては不思議な映画になりました。
何が不思議って、観ている最中は、ふ~ん、って淡々と観ていたのですが、観終わって時間がたつうちにどんどん、この映画を思い出すことが多くなってきて、結構大きな存在の映画になってきたのです。
即効性はないけれど、長い目で見れば効き目のある漢方薬みたいな映画。
だんだん、じわじわと浸透してきて気がつけば、気がつけばこの映画の虜なわたし。
高校生といってもこの映画に出てくる南カルフォルニアにサンクレメンテ高校というのは、明るくもみずみずしくも描かれません。
主人公のブレンダンという高校生は、人つきあいが苦手なくせに、ヤクの売人をしていたけれど、学校にはびこるヤクの売人を学校側に売った・・・という設定で、それだけで、こいつは、周り敵だらけ、だろうな思うのに、風貌がそれに輪をかけて、ひねこびているのです。
ひょろりとした体で猫背、ぼさぼさの髪に眼鏡、気難しそうな、不機嫌な顔をして、いつも汚いジャケットに両手をつっこんで歩く姿。
下からねめつけるような目をするかと思えば、上から見下すような目もする・・・わぁ、友だち、いなさそう・・・。
実際、ブレンダンには友だちもいなくて、今は自主休校して学校にも行かず、ふらふらしているのですが、そんなブレンダンの所に妙な電話がかかってきた。
元彼女、エミリーの取り乱した電話。訳のわからない事を叫んで、助けてくれという。
そして翌日、排水溝で、エミリーの他殺死体を見つけてしまうブレンダン。
取り乱すことなく、警察に頼ることなくブレンダンは、エミリーの言葉から、その真相を探ろうとする・・・
これは、アメリカのハードボイルド小説の一匹狼風の探偵を現代高校生にした、というのが斬新なわけですが、一見ひ弱そうに見えるブレンダン、こ奴、意外と喧嘩が強い。
すぐに手が出るし、殴られる前に殴りかかるのにびっくりします。
ちゃんとポケットから眼鏡ケースを出して、眼鏡をしまい、殴りかかるブレンダン。
とっさに衝動的に動いたというよりも、俺はやるぜって。
そして、へなちょこに見えても、逃げ足がとても速いブレンダン。
機転も効くし、頭は良いのです。ただのヤクの売人じゃないですね。
ブレンダンには仲間はいない。情報提供者はいるけれども基本的には一匹狼なのです。
危ないところにもひとりで堂々と乗り込んでいく。
見た目のひ弱さと、意外な行動、そしてクールなんだか、しらけているのか、すねているのかよくわからない鬱屈したティーン・エイジャー。
明快爽快な映画ではないのですが、ブレンダンを演じたジョゼフ・ゴードン=レヴィットはアメリカのテレビ番組で人気のティーンアイドルだといいます。
垂れ目で、ひとのよさそうな好青年なんですね、別の写真では。
自主映画に近い低予算の映画なのですが、このブレンダンの悲しい猫背の背中がよく出てきます。
俺には明日なんかない、と丸める悲しい背中。
若いのに、ブレンダンには未来はあるのかな・・・いや、ないかもしれない・・・そんなやるせなさが全体を貫いているのがとても印象的です。
話の結末よりも、そんな不安定な不安なティーンエイジャーの姿が、目に焼き付く映画です。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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