パッチギ!LOVE&PEACE

パッチギ!LOVE&PEACE

2007年5月8日 九段会館にて(試写会)

(2007年:日本:128分:監督 井筒和幸)

 井筒監督の映画はストレートでシンプルでわかりやすいと思います。

自分が描きたいことを、奥歯に物がはさまったような表現は使わず、ストレートに映します。

前作『パッチギ!』もそういう映画でした。

在日韓国人家庭を描く、それをストレートに描くから、まだまだ日本に溝がある問題もわかりやすく観客に訴えます。

 わたしは、逆にこの「わかりやすさ」が危険かな、と思ったりしました。

物事には、良いと悪いの2つしかないのではなく、グレーゾーンというようなものがあります。

この映画の主人公、アンソンとキョンジャの兄妹は、ストレートでシンプル。

脇の役者がグレーゾーンを担っていました。

 まず、冒頭アンソンが巻き込まれてしまう国鉄での大喧嘩の仲裁をしたために、国鉄をクビになりアンソンの家に転がり込む佐藤こと藤井隆。

妹、キョンジャが、焼き肉屋の手伝いに不満で、あやしげなタレントスカウトの話にのってしまう。

そのタレント会社のスカウトマンが、(アフロヘアー)の山本浩司、その社長があやしげな、いかにもうさんくさい中年男、でんでん。

芸能界に入ったキョンジャが、出合う人気俳優、野村こと西島秀俊。

 兄と妹という2つの芯をしっかりさせて、かなり豪華な配役を周りに配しています。

また、戦争、というものを描く2つの世界。

それが兄妹の父が済州島で、命からがら、逃げる回想シーンと、キョンジャが韓国人であることを隠して、日本人の新人女優として大抜擢される、特攻隊映画。

 この2つの戦争の描き方をかなりくっきり、はっきりとさせていて、甘ったるい戦争讃美へのわかりやすい批判にしています。

父のように、泥にまみれ、命からがら生き残る方が、特攻隊の美談よりも迫力の撮影をしています。

 井筒監督は、若い人にこの日本人と韓国人の溝、差別、葛藤、そして過去の戦争を訴えたかったのだな、とよくわかりますが、監督得意とするのが、喧嘩のシーンで、何かあると、喧嘩のシーンに流れてしまう。

喧嘩のシーンになると妙にイキイキと映画が動き出すのがおもしろいですが、アンソンも大人になって親になったのだから、もう喧嘩はね?という気持もありました。

それでも頭突き=パッチギやるんじゃい!という監督のヤンチャな一面とも考えられます。

まぁ、監督、他の映画をパッチギのように酷評するので有名になってしまったのですが、やはり、大人になって自分も映画人なのだから、もう喧嘩腰はね?とやんわり言いたい気分です。いい大人がいつまでもヤンチャ小僧気分では困るのです。

  

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