恋愛睡眠のすすめ

恋愛睡眠のすすめ

The Science of Sleep

2007年5月13日 渋谷・シネマライズにて

(2006年:フランス=イタリア:104分:監督 ミシェル・ゴンドリー)

 ミシェル・ゴンドリー監督は前作『エターナル・サンシャイン』でもそうでしたけれど、ギリギリスレスレの現実と妄想の世界を描かせると上手いです。

 今回は、『エターナル・サンシャイン』よりもファンタジックで、遊び心に満ちた現実と妄想の世界を、アニメーションを駆使しています。

アニメーションといっても、セロファンや段ボール紙、フェルトにボタンといった質感の東欧アニメのような世界です。

 そしてこの映画の目玉は、なんといっても主役のガエル・ガルシア・ベルナル演じる、ステファンという男性の幼児性。

映画がすすむ内に、ステファンは30歳近い青年だという事がわかるのですが、もう、子供です。

精神年齢推定10歳、とみました。

これを、かっわいい~~~キュート!ととるか、あらまー困ったね・・・ととるかでこの映画の評価は違ってくると思います。

 ステファンはメキシコから母の住むパリにやってきました。

自称イラストレーターのステファンは、ママが探してくれたカレンダー制作会社に入りますが、仕事は単調な切り貼り仕事。

そして引っ越してきた家の隣人の女性、ステファニー(シャルロット・ゲンズブール)を好きになります。

ステファン、思いこむと、もう暴走します。好き好き好き~~~~~~と迫りますが、独身主義の大人の女性、ステファニーは相手にしない。

 このステファニーにつれなくされたときのガエル・ガルシア・ベルナルの「ううううっ・・・」という上目遣いが凄いですね。

完全に欲しいものをおあずけくらった子供の目。

なんで、なんで、なんで、ボクのこと、好きになってくれないの?なんで?なんで?

子供だから、とても独占欲が強くて、嫉妬深く、かなりひとりよがりで、思いこむと暴走・・・そして眠った時の夢の中ではおもちゃのような(まさに子供のおもちゃの世界)世界で、ステファニーには好かれ、退屈な仕事、イヤな同僚はぽいっ!自分に都合よいことばかり。

 かなり、自分に都合よい夢というものを戯画的に風刺的に監督は描いているし、精神子供の男をガエル・ガルシア・ベルナルがギリギリの可愛らしさで熱演しています。

夢と現実もハッキリわかれているのではなくその境目が、曖昧でめちゃくちゃのような、単純明快な映画ではないです。

その描き方が、とてもアーティスティックで、個性的で、イジワルです。

ステファンの部屋もステファニーの部屋も物がごちゃごちゃしていて、混沌としているし、ステファンのベッドの枕の模様が完全に子供柄で(大人のする枕ではない)笑ってしまいました。

 可愛いものの影に潜む幼児性。そんなものを映画にしてしまった所がいいと思います。

恋愛映画としてはハリウッド映画のようなわかりやすさはなく、あくまでもファンタジックに曖昧にさせています。

 この映画のガエル・ガルシア・ベルナルが演じたステファンは、津田寛治主演の『ラブ・キル・キル』のストーカーに近いものがあって、空回りしているのがとても滑稽なのです。

時にはやりすぎだと思うくらい、真面目な深刻な役も熱演するガエル・ガルシア・ベルナル・・・この幼児精神演技もかなり熱入っていますが、かわいいのか、みっともないのかわからない暴走ぶり・・・夢の中ではネコのぬいぐるみまで。

 この映画をもし、日本でやるとしたら、ネコの着ぐるみが似合う役者として水橋研二くんでしょう。

顔がちょっと童顔で、年齢に関係なく困った幼児性を上手くだせる人は、ガエル君と水橋君かもしれません。

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