14歳
2007年5月20日 渋谷・ユーロスペースにて
(2006年:日本;114分:監督 廣末哲万)
第16回PFFスカラシップ作品
14歳というのは難しい年齢だった、と自分を振り返っても思います。
そんな14歳の嘘のない姿を、フィクションながら描き出してしまっている映画。
14歳というのは息苦しい、まだまだ、親のいいなりにならなければならない、まだまだ自立は出来ないけれど、自我が発達する頃。
反抗期でもあり、思春期でもあり、若いときでもあります。
しかし、この映画は『リリィ・シュシュのすべて』とはまた違った中学生映画です。
むしろ、主人公は「12年前、14歳だった中学校の教師」深津(並木愛枝)
普通、嫌でしょうがなかった学校生活というのは卒業したら、二度と戻らないものかもしれませんが、深津は、精神科に通いながらも、教師という立場を全うしようとする。
精神科医には、「今の14歳を救うのではなく、14歳だった自分を救いたいのだろう」と言われる。
確かに、生徒に対して、妙に弱気で、生徒に「嫌われたくない」という態度で弱々しくしか、接する事しか出来ないから、そんな「弱い大人」を知恵がつきはじめた今の14歳たちは、見抜いていじめぬくのです。
そんなとき、深津の中学の同級生だった杉野(廣末哲万)が、偶然出合う。
今は測量の仕事を黙々としている杉野は、中学生のときピアノが好きだったものの、大人のすげない一言で挫折。
それを知って、息子のピアノの家庭教師をしてくれないか、と言われた中学生の男子生徒の担任が、深津だったのです。
自傷的とも言える教師の仕事をしている深津、道路を測量するだけの日々の杉野。
深津の同僚の教師で、強気な小林(香川照之)もいれば、中学生たちの母親たちも、上手くぼかしてグラデーションをつけて描き分けています。
挫折の瀬戸際にいる社会人、自己中心的で、自分の都合の良いようにだけしか子供を見ない身勝手な母親たち・・・嫌な14歳もでてきますが、大人たちの複雑な嫌な気持という方が最後まで観てみると、身にしみるようです。
「ぼくにはピアノの才能がありますか」と「才能ある」という答えを確信した上で、甘えたように聞いてくる中学生に、杉野は嫌悪しか感じない。それが、「笑いが止まらなくなってしまうのを必死に隠す」という、ここら辺の空気の出し方の上手さ。
PFFスカラシップ作品ではありますが、そうそう資金がある映画ではないのです。
かといって、ありがちな手持ちカメラで人物を追うということもしない。
カメラはいつも安定していて、うぬぼれや憎悪の表情を切り取ってみせます。
性能がよすぎて、いらないものまでハッキリ映ってしまうデジカメのような映画
キレイ、美しい・・・にするのにはある程度、ぼかすということが必要に思うのですが、この映画は目をそらさない。
そして14歳の問題提起ではなく、「誰でも通り過ぎた14歳だった大人たち」の問題をあぶりだしてみせます。
深津を演じた並木愛枝の「いつまでもふっきれない表情」と、廣末哲万の「嫌気がさしているのを受け入れている無表情」がとても印象的。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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