ウミヒコヤマヒコマイヒコ

ウミヒコヤマヒコマイヒコ

2007年6月13日 シアターN渋谷にて

(2007年:日本:120分:監督 油谷勝海)

 田中泯さんは、わたしは映画しか知らないので、映画の田中泯さんしか知らないので恐縮ですが、農業をしながら踊りをされ、映画でも『たそがれ清兵衛』『メゾン・ド・ヒミコ』で存在感がありました。

声もとても良くて『鉄コン筋クリート』では声優としても。

このドキュメンタリーは45日間かけて、田中泯さんがインドネシアの島々を踊りながら歩いた記録です。

 人を招いて人前で踊ったのは最初と最後の2回だけで、後は監督いわく「約33回踊った・・・(監督には踊っていると思われるのが33回)」

 「ヤマヒコ」「ミチヒコ」「ムラヒコ」・・・山、路、村・・・どんなところでも「踊る」泯さん。

 思えば、映画での泯さんというのは普通の格好はしていなくて、初めて、普通の格好をした泯さんを見ました。

最初、なんて背の高い、スタイルのいいひとだろう・・・と思いました。

「私は百姓です。でも踊りもします」

「私は踊っている気なんですが、そう見えないかもしれません」

「村で日本語が少し出来る老人に、「昔の日本兵が戻ってきたようだ」と言われました」

「この村では働いてばかりいました」

泯さんによるナレーションだけで、どんな話をした、といった肉声は出さない。

そして、とにかく踊る泯さん。

立っているだけで、踊る泯さん。

地面に倒れているだけで踊っている泯さん。

泯さんが踊ると、大体村の人が遠巻きに見ていて、そして大体、犬が近くにきてしげしげと泯さんを見る。

「犬に笑われるほど寝転がる」

 水田で働く牛たちも、水田の中で踊る泯さんに興味津々。

働きながら後をふりかえる牛って初めて見ましたね。

 泯さんは、子供たちに人気です。

意味不明に見えても、面白いものに敏感に反応するのは子供なんですね。

泯さんが踊りながら近づくと、子供たちをキャーと逃げますが、子供の顔は笑っている。

 土にも、水田の泥にも、草にも木にも海にも、石にも、川の流れにも、泯さんは同化してとけこんでしまう。

一見、奇妙で滅茶苦茶に見える踊りかもしれませんが、泯さんは大変、鍛え抜かれた素晴らしい筋肉の持ち主。

踊りは、動くということだけではなく、じっとしている事も踊りなのだと思います。

そんな泯さんの「静止力」の力強さも、カメラは丁寧に拾います。


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