東京タワー オカンとボクと、時々オトン

東京タワー オカンとボクと、時々オトン

2007年6月14日 有楽町マリオンにて

(2007年:日本:142分:監督 松岡錠司)

 リリー・フランキーが、こういった自伝小説を書き、それがベストセラーになる、というのは最初信じられなくて、だんだん内容がわかってくるうちにますます信じられなかったのですが、これは事実でした。

一番疑問に思ったのは、「号泣小説」といった紹介のされ方で、リリー・フランキーでなかったら、納得したかもしれませんが、やはり、えええ?とリリー・フランキーのおもしろコラムやイラストの「暴れ方」が好きだったわたしは、1人半信半疑。

 原作がリリー・フランキーで、監督が松岡錠司で、脚本が松尾スズキ・・・・という組み合わせのひとつでも欠けていたら、わたしはこの映画は観なかったかもしれません。

 結婚式の披露宴での両親への花束贈呈、そしてお母さんへの手紙の朗読・・・みたいな恥ずかしいこと、2時間以上スクリーンでやられたらたまらない・・・からです。

 しかし、この映画は「軸がしっかりしている」

あくまでも、この映画はひとりの青年と母親のちいさな、ちいさな話であり、そこに時々現われる父親。

ただの泣ける人情話や美談ではない、役者のひとりひとりへの役への作り込み、その練り方が非常にこってりと練られていて、ちいさな話にありがちな「妥協」の雰囲気がないのです。

むしろ、さばさばとした雰囲気と、どうしようもない、自堕落な男のとほほな人間模様・・・・手を抜くことなく、観客に媚びることなく、ちいさい話の筋の通し方が太いのです。

 母がガンになってから、やっと東京へ呼び寄せることが出来たボク。

闘病生活に苦しむ姿を見つめるボク。

そして、時々現われる、オトン。

 「おかあさん、ありがとう」ではなくて、「オカン、ありがとね」というちょっと照れの混じった1人の男のつぶやきをここまで大きな映画にしてしまったところに感心してしまいました。やりそうでやらないことって意外と使い古された中にあるものなのだなぁ、と思います。

この映画は「感謝と感傷」だと思うのですが、「感謝」だけでなく、「感傷」だけでなく、その合間の「と」の部分を直球ストレートで、映画にしたところがこの映画のいいところであり、観ていて感心ばかりする、映画としての作り込みの上手さの2時間22分。 

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