ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習
Borat:Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan
2007年6月17日 渋谷 シネ・アミューズにて
(2006年:アメリカ:84分:監督 ラリー・チャールズ)
最初に断っておきますとこの映画は大変不謹慎です。
しかし、この不謹慎の前には、「無垢なる」がつくわけです。無垢なる不謹慎。
もう、「知らないから」「わかりませ~~~ん」と言ってしまえば、もう、何も怖くないもんね!という確信犯的な作りの映画です。
万引きだろうっ!と迫っても、「え~~、お店でお金払うなんてワタシ、シリマセ~ン」としらっとしている、といいますか。
ドキュメンタリー風にしているけれども、すべてが作り手の巧妙な計算のもとでの不謹慎。
これが半端でなく、筋通しているという点では、18禁のマペット・ムービー『チーム★アメリカ ワールドポリス』に並びます。
ヤグシェマシュ!ハ~イ、カザフスタンの国営テレビのレポーター、ボラットで~す。
この度、政府情報局よりアメリカ文化をレポートする仕事がありました。
アメリカで文化を学びたいと思いま~す。チンクイ。
まず、ボラットさんの故郷の村の紹介からして、もうもう・・・ボラットさんというか、この村では、ユダヤ人が天敵です。
村のお祭り、「ユダヤ人狩り」をご紹介しま~す、からして、もうもうもう・・・・・
さて、アメリカに着いたボラットさんは、まず、アメリカの人たちと親交を深めようと、「ジョーク教室」に行きます。
しかし、どうもアメリカのジョークはよくわかりません。でも、使ってみようと思います。
ひょんな事から、アメリカ横断の旅に出ることになったボラットさん。
見事にブーイングと顰蹙の嵐にあいます。
しかし、ボラットさんは無垢そのものでありますから、罪悪感なんてありません。むしろ、なんで嫌われるんでしょう?ワタシ、ワカリマセ~ン。
アメリカは不思議な国ですねぇ。
カザフスタンのレポーター、ボラットというのは、実はユダヤ系イギリス人、サシャ・バロン・コーエンというコメディアンの作ったキャラクターのひとり。
しかし、映画はそんなボラットになりきったサシャ・バロン・コーエンが、何も知らない人々の懐に、「ハ~イ!ボラットでぇ~す」と飛びこんで行く様子から、見えるのは、アメリカの色々な面です。はっきり言って、人々、ボラットさんの挨拶のキスから逃げ回ります。なんで~?
ボラットさんが、全身から発する強烈な、明るい無垢なるスケベ光線に、良識的なアメリカの皆さん、偽善的なアメリカの皆さん、ぶったぎりにされてしまうのです。きついジョークもボラットさんからしたら、ジョークでもなんでもない、普通のこと。
価値観の違いをここまで笑いにできるのは、よほど頭よくないと出来ないことです。
恐ろしいほど、爽快な気分になりますよ。
それでもボラットさんは、純情な面も持っている。好きになった女の人には、きちんと操をたてる(?!)
しかし、そのためには、全裸になってホテル中を駆け回ることも、気にならないっ!
実際、この映画の撮影の最中に、本気で怒った人たちに警察を呼ばれたりしたことがたくさんあったそうですが、撮影を敢行してしまう筋の通し方が凄い。
この映画は、2006年アメリカ、ゴールデングローブ賞の主演男優賞をとりました。
その様子をテレビで観たときは、このサシャ・バロン・コーエンという人がどんな人かわからず、また、受賞のスピーチで「ハダカになったときのワタシの気持は・・・」で、会場が大爆笑になったのがよくわからなかったのですが、映画を観るとよく、わかりました。
こういう映画をきちんと評価して、賞をあげる、ゴールデングローブ賞ってとても好きですね。
これはコメディ映画というより、文化比較学的アプローチをした大変、不謹慎ながらも知的な笑いの映画なのです。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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