スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー

スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー

Sketches of Frank Gehry

2007年6月17日 渋谷 ル・シネマにて

(2005年:ドイツ=アメリカ:84分:監督 シドニー・歩ラック)

 フランク・ゲーリーという建築家の名前はこの映画で初めて知りました。

監督をしたシドニー・ポラックいわく、「私は建築には素人だ」という事を伝えたら、フランク・ゲーリーは「だからこそ、適任なんだよ」と言ったそうです。

あれこれ、知識から言う人よりも、建築物というひとつの形を、どうとらえてくれるのか・・・これは芸術作品ではなく、きちんとした建築物でなければならない、中で、人々が働き、または、コンサートを開き・・・といった活動の場でなければならない。

ただ、飾る芸術を作るわけではないし、建築物にかかる金額は莫大。失敗は許されない。

私はシドニー・歩ラック監督と一緒になって、フランク・ゲーリーの建築物を眺める、という感じになりました。

 曲線を多用した独特なアンバランスなフォルム、光をとりいれるように金属やガラスをよく使う巨大な建物。

それは、美しいと言われると同時に、理解できない、怪物のよう、醜い・・・といった批評もされます。

 シドニー・ポラック監督は、自分でデジタル・ヴィデオを回しながら、フランク・ゲーリーにインタビューする、というより対話する。

ドキュメンタリーの作り手と対象となる関係では、40年前、50年前・・・まだまだ、世間から認められなかった、若い映画監督と若い建築家・・・ということで親交はあったそうです。

どちらも、「自分の作りたいものを極めたい」という思いと「施工主、映画会社の期待や要望に応えなければならない」という板挟みに苦しんだ2人の言葉が、実はよく似ているのですね。妙に「うんうん」「そうそう、そうだよね」と言い合う2人。

 だからこの映画では、監督とフランク・ゲーリーは全く同等の立場としてとらえられています。

曲線の多い建物・・・最初は図面よりもイメージから、紙で模型を作るのですが、これが、結構、ざっくばらんで、子供が切り紙工作をしているような感覚なんですね。

はさみでざくざく、セロテープでぺたぺた。

 しかし、今、建築家として有名になったフランク・ゲーリーは、若いスタッフを抱え、自分がこうしたい・・・・というイメージを語れば、スタッフがその通りに模型を作り、図面を引く・・・・ほとんど活花の家元状態。

そして、パソコンの導入により、フランク・ゲーリーの建築作業はとてもやりやすくなったそうです。

映画の特撮並のCGグラフィック・デザイナーにより、どんどん、フランク・ゲーリーの頭の中のフォルムが出来上がる。

現代のパソコンでないと、描ききれなかった図面を頭に描いていた人。

 しかし、やはり、話にくそうではありますが、何もかもが上手くいったわけではなく、精神不安定になり、ずっと支えるカウンセラーがいること、家族関係の崩壊・・・など、かなりプライベートな部分もざっくばらんに語ります。

建築が完成した後、一年は、心配でしょうがないこと。建築が思い通りにならなかった例もあること。失敗をたくさんしてきたこと。

 そしてスペインのグッゲンハイム美術館を丁寧に映します。

そして、フランク・ゲーリーは、建築に必要なのは光だ、と言います。

建物は、太陽光線の具合によって様々な光を発し、影を作る。しかし、華々しいというより、重厚感を持つ建物です。

建物、というとつい、左右対称とか、直線的なイメージを持っていることに気がつきました。

それくらい、フランク・ゲーリーの考え出す建物は、自由自在のフォルムを持っているのです。それが観られただけでも満足です。 

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