ボルベール〈帰郷〉

ボルベール〈帰郷〉

Volver

2007年7月1日 有楽座にて

(2006年:スペイン:120分:監督 ペドロ・アルモドバル)

 とことん女の映画。

男性は出てきても背景にすぎません。

今までは、男性も含めた女性像というのを映画にしてきたアルモドバル監督ですけれども、今回は潔く、女だけ。

 女性群像というのでもなく、ある一家の女性・・・母、長女、次女、次女の娘・・・それだけ、といってもいいくらいの筋の通し方。

それで2時間みせてしまうのだから大したものです。

 昔、山火事で死んだと思っていた母が実は生きていた・・・それを素直に受け入れることが出来ないのが、次女、ライムンダ(ペネロペ・クルス)

だらしない夫を抱え、ひたすら働くペネロペ・クルスの生活疲れてますという顔が迫力。

服も野暮ったい服を着て、生活に追われている様子。

この映画は「母、帰る」ということなのですが、サスペンス要素たっぷりの「話」なのに、描いているのはひたすら女である、という。

だから、すっきりと謎が解ける・・・というより、やっと、年月がたって、受け入れるか、どうかをじっくり描いています。

それぞれ、胸の中に言えない悩みを抱えながら生活する・・・そんな女のしぶとさがよくわかる映画。

 ひょんな事から、お隣のレストランのオーナーが留守の間、ちゃっかりレストランを借りて、映画クルーの食事を出すという仕事を始めたライムンダですけれども、いつも後ろめたさを抱えている。

しんどい状況がずっと続くと言えばそうなのですが、映画は、妙にユーモラスなシーンをはさんで、どろんと深刻にはしていません。

しかし、罪の意識、裏切った意識、嘘をついている意識・・・登場人物たちが胸に秘めている罪悪感。

この映画は女の罪悪感を通しています。

 それが法で裁かれる前に、家族の中でどう裁かれていくか・・・がスリリングです。

父親、夫といった支配的な人物を排し、女だけの世界で裁かれる罪と罰。

アルモドバル監督は、もう、法によって支配される人間関係など興味ないのではないでしょうか。

生身の人間が、ぶつかりあって、許し合う・・・そのことを前面に押し出しています。

 ペネロペ・クルスは、生活感を出す為に、お尻を大きくみせるためにつけ尻をしたそうですが、今までの綺麗な女優さんを捨てた女演技。

カンヌ映画祭では、この映画の女優全員に主演女優賞が贈られたという事もあって、帰ってきた母も、長女も、まだ14歳の娘もそれぞれの立場を機微に富んだ演技でみせます。

 ペネロペ・クルスは、がっしりとしたスペイン女性・・・という役への作り込みが凄いのですが、わたしが密かに感心してしまったのはアイメイク。もう、アイ・ライナーで目の周り、黒くくっきりと描いていて、これは日本人には出来ないです。

そして、レストランでパーティやるんだ・・・というとなるとお化粧しますが、アイメイクがさらにヒートアップして、目の回り真っ黒状態。

それでもペネロペ・クルスだったら、全然おかしくないのです。さすがです。 

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