インビジブル・ウェーブ

インビジブル・ウェーブ

Invisible Waves

2007年7月4日 シネマートン六本木にて

(2006年:オランダ=香港=韓国:監督 ペンエーグ・ラッタナルアーン)

 『地球で最後のふたり』のペンエーグ・ラッタナルアーン監督、撮影、クリストファー・ドイル、主演、浅野忠信のスタッフ&キャスト再び、です。

とても静かな映画なのですが、人を殺してしまった罪の意識を抱えたままの旅。

それは香港からタイのプーケットへの船旅です。

 映画というのは波のようなもので、大きな波もあれば、小さな波もあります。

この映画は「見えない波」なんですね。

だから、映画は目にはみえない何かをずっと追っています。

それは、声高にわかりやすく訴えるものではなく、誰が信用できて、誰が信用できないのか・・・さっぱりわからなくなるように、全くもって人の気持は見えないのです。

 クリストファー・ドイルの撮影は、いつも安定と不安定を持ち合わせていると思います。

そして、部屋の中、船室の中・・・そんな狭いところを静かに映します。

 主演の浅野忠信は、無表情を通していますが、この映画に出てくる人は大体、わかりやすい表情を見せません。

船の中で出合う女性、ノイ(カン・ヘジョン)は、可愛らしくてもどこか気まぐれでよくわからないところがある。

プーケットで、出合う「リザード」こと光石研も、正体のわからない不思議な存在。

誰も答えをくれない・・・そんな中で、キョウジという男は、事の真相を知るにつれ、ますます、無表情、そして厭世観を持っていくようです。

 明るい日射しのプーケットでひとりたたずむ男。

この映画はとても静かです。熱いものを持っている訳ではなく、その温度はとても低い。

 監督はタイの人ですが、タイ映画でもなく、主演に日本人をもってきても、日本映画でもない。

そんな混沌としたアジアン・ムービーを作り上げてしまう、監督の穏やかな雰囲気がとても好きです。

 カン・ヘジョンがノイという名前で、『地球で最後のふたり』で浅野忠信が出合ったタイ人女性の名前と同じであったり、光石研がカラオケで歌う歌がモップスの「たどりついたらいつも雨降り」というのが、日本映画、タイ映画・・・○○(国名)映画というくくりをまったくはずしてしまった世界である、という力みのなさ、がこの映画の好きなところです。 

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